
くも膜下出血


くも膜下出血って、手術が終わってからも厳重な管理が必要だから、受け持ちになると緊張する…。

くも膜下出血は、合併症が予後に大きく影響する疾患だから、緊張感があるよね。私も受け持つときは、わずかな変化の見逃しがないか注意深く観察してるよ!くも膜下出血の病態や合併症について再度学んでおこう!
解説記事で学べること!
くも膜下出血の病態

くも膜下出血(SAH:Subarachnoid Hemorrhage)は、脳出血の中でも特に緊急性が高い病態。
脳を覆っている膜は、外側から順に「硬膜」「くも膜」「軟膜」の3層構造になっているよ。このうち、くも膜と軟膜の間にある“くも膜下腔”に出血が起こるのが、くも膜下出血だよ。

くも膜下腔には、脳を栄養する動脈が走っていて、この動脈が破れると血液がくも膜下腔に流れ込む。この出血が急激に起こることで、強い頭痛や意識障害などの症状が出現するよ。
くも膜下出血は発症直後の生命リスクが非常に高く、初回発症時に約35%が死亡するというデータもある疾患。また、その後の数週間以内にも約15%が再破裂によって命を落とすとされていて、「いかに早く出血を止めるか」「再出血を防げるか」が予後を大きく左右するんだ。
くも膜下出血の原因

くも膜下出血の約8割は、脳動脈瘤の破裂が原因とされているよ。
脳動脈瘤の破裂
脳動脈瘤とは、血管の壁がもろくなってできた「こぶ」のようなもの。血流の圧力によってこのこぶが破裂すると、一気にくも膜下腔に出血が広がるんだ。
脳動脈瘤の好発部位は以下のとおり。
- 内頚動脈(ICA)
- 前交通動脈(A-com)
- 中大脳動脈(MCA)
これらは「ウィリス動脈輪」と呼ばれる脳の血管の分岐部で、血流の分かれ道にできやすいよ。

脳動静脈奇形(AVM)
脳動静脈奇形とは、胎児のときに血管が正常に分かれなかったことでできる、血管の異常な塊(ナイダス)のこと。
本来、血液は「動脈 → 毛細血管 → 静脈」と流れるけど、AVMでは毛細血管がなく、動脈と静脈が直接つながっているため、圧が高くなりやすく、破裂しやすい状態。破裂すると、くも膜下出血や脳出血を引き起こすんだ。
その他
- 脳出血がくも膜下腔へ広がる場合
- もやもや病による血管破裂
- 外傷によるもの(外傷性くも膜下出血)
→ 交通事故や転倒などの衝撃で、頭を強く打ったときに起こる出血
→ 脳挫傷やびまん性軸索損傷を伴うことが多い

くも膜下出血は、出血の場所が特殊な疾患で、原因や病態を早期に理解することが治療や予後に大きく影響するよ。
くも膜下出血の症状
脳脊髄液で満たされた「くも膜下腔」に血液が流れ込むことで、頭蓋内圧が急激に上昇し、さまざまな症状が出現するよ。また、流れ込んだ血液が髄膜を刺激することで、髄膜刺激症状が起こることも特徴のひとつなんだ。
急激な圧の変化と血液による刺激が、脳に大きな負担をかけるため、突然症状が現れ、早いスピードで進行していくんだ。
発症時にみられる症状と前駆症状
突然の激しい頭痛
くも膜下出血の代表的な症状は、これまで経験したことのない激しい頭痛。
患者さんからは「バットやハンマーで殴られたような」「人生で一番ひどい頭痛」といった表現をされることが多く、急に発症することが特徴。一気にくも膜下腔に血液が流れ込むことで、激しい頭痛が引き起こされるよ。
発症時によくみられるその他の症状
- 悪心・嘔吐(頭蓋内圧の上昇による反応)
- 意識障害(出血量や部位によって重度に至ることも)
- けいれん発作
- めまい・ふらつき
- 血圧の急激な変動(交感神経の緊張による)
- 頸部痛(髄膜の刺激による)
これらの症状は、発症直後から急激に悪化する可能性があるから、迅速な観察と対応が必要だよ。
くも膜下出血のサイン
くも膜下出血の8割を占める原因である脳動脈瘤が破裂する直前には、次のようなサインがみられることがある。
- 眼瞼下垂(まぶたが下がる)や複視(ものが二重に見える)
→ 動眼神経が圧迫されることで起こる - 軽度の頭痛や吐き気
- 血圧の不安定な変動
これらの前駆症状を「ただの疲れ」「片頭痛」と見逃してしまうと、重症化してから気が付くというケースも少なくないんだ。
髄膜刺激症状
くも膜下腔に流れた血液は、髄膜を刺激し、化学性髄膜炎を引き起こすことがあるよ。
その結果、以下のような髄膜刺激症状が現れる。
- 項部硬直(首の後ろが硬くなり、前屈できなくなる)
- ケルニッヒ徴候(股関節と膝を曲げた状態で膝を伸ばそうとすると痛みが出る)
- ブルジンスキー徴候(首を前に倒すと、反射的に膝が曲がる)
これらの所見は、出血後の数時間~24時間以内に現れることが多く、脳血管疾患患者の観察において重要な視点なんだ。
くも膜下出血の検査

くも膜下出血が疑われたとき、まず行われるのが頭部CT。
くも膜下腔は通常、黒っぽく(低吸収域)見えるけど、出血がある場合には、白く(高吸収域)写るのが特徴。特に、五角形状に広がる白い陰影が確認される場合には、くも膜下出血を強く疑うよ。
ただし、発症から時間が経過するにつれて、CT画像での出血の描出は難しくなる…。できるだけ早期に撮影を行うことが大切なんだ。
原因を詳しく調べる検査
くも膜下出血の約8割は脳動脈瘤の破裂が原因のため、血管造影などを行い、動脈瘤のある位置を正確に把握することが必要だよ。
- MRA(MRアンギオグラフィー)・CTA(CTアンギオグラフィー)
:比較的非侵襲的で、脳動脈瘤や動静脈奇形(AVM)の存在を画像で確認できる - 脳血管撮影(DSA)
:最も詳細な血管情報が得られる検査。血管内にカテーテルを入れて造影剤を注入し、リアルタイムで血流を観察する。侵襲的な検査であるため、穿刺部の止血確認や合併症の観察などが必要。
CTで確定できない場合
頭部CTで明らかな出血所見が確認できない場合でも、症状や経過からくも膜下出血が強く疑われるときには、腰椎穿刺(ルンバール)が行われる。
髄液に血液が混じっているかを調べることで、隠れた出血を見つけることができるよ。採取した髄液が均一に血性である場合はくも膜下出血の可能性が高い。一方で、採取管ごとに薄くなるような血液混入は「外傷性穿刺(採取時の出血)」である可能性があるんだ。
脳血管攣縮に対する検査
出血から数日後には、脳血管が収縮し血流が悪くなる「遅発性脳血管攣縮」が起こることがある。これは二次的な脳梗塞の原因にもなるから、早期発見が大切だよ。
- 経頭蓋ドプラ(TCD):超音波で脳血流速度を測定
- NIRS(近赤外分光法):頭部にセンサーを装着し、脳の酸素状態を非侵襲的に評価
これらを治療経過中に繰り返し行うことで、患者の状態変化をいち早く察知する手がかりとなるんだ。
くも膜下出血の治療

くも膜下出血は、「再出血を防ぐこと」が治療の大きな目的。
発症直後はとくにリスクが高く、早期に原因を取り除き、合併症を予防しながら安定した状態を保つことが大切だよ。
治療法の選択は、患者さんの年齢や全身状態、出血の程度、動脈瘤の位置・形状などを総合的に判断して決定されるんだ。
- 収縮期血圧の上限はおおむね140~160mmHg以下になるよう管理
- 必要に応じて降圧薬の使用
- 鎮痛薬や鎮静薬を使用し、痛みや不安による血圧上昇を防ぐ
痙攣に対する予防的な抗てんかん薬の使用については、明確な根拠がないとされており、ルーチンでの使用は推奨されていないよ。
外科的治療

くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤の破裂だよ。そのため、再出血を防ぐためには、動脈瘤自体を処置して血液が流れ込まないようにする手術が行われるよ。
開頭クリッピング術
開頭クリッピング術は、頭蓋骨を開いて、破裂した脳動脈瘤の根元に直接チタン製のクリップをかける手術。手術中に動脈瘤を実際に目で確認しながら処置を行えるため、非常に確実性が高い治療といえる。この方法は、一度処置した部位からの再出血のリスクが低いとされてるよ。
ただし、頭部を開ける必要があるため、身体への負担(侵襲)は大きくなる。高齢の患者さんや、全身状態に不安がある場合には、慎重に判断されるんだ。
コイル塞栓術(血管内治療)
コイル塞栓術は、足の付け根(大腿動脈)からカテーテルを挿入し、脳動脈瘤まで進めていく血管内治療。動脈瘤の中に細い金属製のコイルをくるくると詰めていくことで、血液の流入を防ぎ、再出血を予防するよ。
この治療は開頭せずに行えるから、身体への負担が少なく、高齢者や手術リスクの高い患者さんでも実施しやすいという利点がある。一方で、動脈瘤の完全な閉塞が難しい場合もあり、再発リスクは10〜20%程度とされてるんだ。
遅発性脳血管攣縮への対応
くも膜下出血の合併症の一つである脳血管攣縮を起こすと、血管が細く収縮し、脳への血流が減少するから、新たな脳梗塞を引き起こすおそれがあるよ。
ドレナージ
- 腰椎ドレナージ:治療後、脳脊髄液中の血液を排出し、脳血管攣縮の発生を抑える目的で行われる。開頭術・血管内治療のどちらでも適応
- 脳槽ドレナージ:とくに開頭術を受けた患者さんで実施される
薬物療法
よく使われる薬物には以下のものがあります。
- クラゾセンタン:静脈内投与で高い有効性を示す。再狭窄や脳虚血の予防
- ファスジル・オザグレルナトリウム・エダラボン:血管の保護や炎症の抑制
- シロスタゾール:経口投与により、脳血管攣縮の発生率や脳梗塞のリスクを減らす
くも膜下出血の合併症

くも膜下出血の代表的な合併症は、「再出血」「脳血管攣縮」「正常圧水頭症」。
これらはそれぞれ発症のタイミングや症状が異なり、予後や後遺症に大きく影響するから、どの時期に、どんな症状が起こるかを理解しておこう。
再出血
くも膜下出血の合併症の中で、最も早く・最も危険性が高いのが「再出血」。
くも膜下出血が起きた直後、破裂した血管はフィブリンという血液成分によって一時的に止血されている状態。しかし、血圧が上がったり、頭蓋内圧が高くなったりすると、このフィブリンが剥がれ、再び出血する危険性が高まるんだ。
特に発症後24時間以内に起こりやすく、予後不良の約3分の2が再出血に関係していると言われているよ。
脳血管攣縮(スパズム)
脳血管攣縮とは、くも膜下出血によって脳内の血管が収縮し、脳への血流が悪くなる状態をいうよ。
血管が収縮することで、脳の一部に十分な血液が届かなくなり、次のような症状が見られる。
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 言葉が出にくくなる(失語)
- 身体の感覚がおかしくなる(失認) など
発症から3日目〜14日目ごろまでの期間に起こりやすく、この時期は「スパズム期」と呼ばれ、特に注意が必要なんだ。重症例では、脳梗塞を引き起こすことも少なくないよ。
この時期から、血圧の上限指示が変更になることがあるから、必ずチェックしよう!
正常圧水頭症
正常圧水頭症は、くも膜下出血の発症から3週間以降に出現することがある合併症。出血により、脳脊髄液の吸収や循環が障害され、脳室と呼ばれる脳内の空間が徐々に広がっていくことで発症するんだ。
この状態では、以下の3つの特徴的な症状が見られる。
- 歩行障害(歩幅が小さくなったり、ふらつく)
- 認知機能の低下(物忘れや理解力の低下)
- 尿失禁(突然の尿意や我慢できない排尿)
診断には、髄液を一時的に抜いて症状の改善を見る「タップテスト」が行われるよ。改善が見られた場合には、VPシャント(脳室-腹腔シャント)や脳室ドレナージによって、溜まった髄液を排出する治療が行われるんだ。
くも膜下出血患者の看護
くも膜下出血は生命にかかわる緊急度の高い病気。だからこそ、急性期から慢性期にかけて、看護師の観察・判断・ケアの質が患者の予後に大きく影響するよ。

初期対応から再発予防まで、時期に応じた適切な看護介入が求められるんだ。
発症初期はスムーズに治療へ移行
くも膜下出血は、発症直後が最も危険な時期。この時期に再出血が起こると致命的になることが多く、迅速に全身状態を安定させ、スムーズに検査や手術へ移行することが看護師に求められるよ。患者さんのささいな変化に注意を払いながら、チーム全体でスピーディに対応できる体制を整えておこう。
- 突然の意識消失やけいれん、瞳孔不同、麻痺などがないかを観察。GCSやJCSはスタッフ全員が同じ尺度で行えるようトレーニングし、記録も正確に行う。
- 血圧・心拍数・呼吸数・SpO₂など、バイタルサインを頻回に測定し、必要に応じて酸素投与を行う。高血圧や頻脈は再出血の引き金となるため、急変に備えた準備も必要。
- CTやMRI、血管造影などの検査へスムーズに移行できるように準備を行う。手術予定の場合、物品の確認・搬送準備・家族への情報提供なども行う。
- 鎮痛・鎮静薬の投与時は、呼吸抑制などの副作用にも注意。
全身のモニタリングと合併症の予防
くも膜下出血の合併症は、生命予後や日常生活動作(ADL)に大きく影響するため、早期発見と的確な対応が看護師に強く求められる。急性期を過ぎた後も、全身状態や神経症状を丁寧に観察し、異常のサインを見逃さないようにしよう。
- 急な頭痛の悪化、意識レベルの低下、血圧の急上昇が見られた場合は再出血の可能性があるため、安静の保持を。
- スパズム期は、脳血管攣縮に注意。脳血管が収縮し、血流不足により頭痛、嘔吐、言語障害、視野異常、片麻痺などが現れる可能性があるから、血圧や水分出納バランス(IN-OUT)の管理を確実に。
- 認知機能の低下がある高齢者では見逃されてしまうことも少なくない。認知機能やADLの変化に気が付けるよう、日ごろから患者さんとのコミュニケーションを大切にする。
安静度に合わせたリハビリ介入
適切なタイミングと方法で離床を開始することで、歩行の獲得率や退院時の自立度が高まることがわかっており、くも膜下出血の患者さんにとっても、離床は回復を支える大切なケアの一つだよ。
でも、くも膜下出血は合併症を再発するリスクが高い病気で、予後にも影響を及すんだ。だから、離床は、「急がず」「段階的に」「安全に」進める必要があるよ。看護師は患者の状態を十分に観察しながら、医師やリハビリスタッフと連携して介入を進めていこう。
- 再出血のリスクが最も高い発症後24時間以内は、原則ベッド上安静。
- 治療後であっても、急激な血圧変動や頭痛の出現、失語や片麻痺など新たな神経症状が出現した場合は、ただちに中止する。
- ドレーン留置中の患者では、クランプ時間や排液状況を確認しながら短時間の離床を。離床前後の症状や排液の性状・量にも注意。
再発予防を見据えた生活指導
くも膜下出血の再出血や脳動脈瘤の再形成を防ぐためには、生活習慣の見直しや、定期的な検査が不可欠。患者さんだけでなく、ご家族にも協力を仰ぎ、再発予防に向けた指導を行っていくことが大切だね。
- 高血圧や動脈硬化は、脳動脈瘤形成や破裂のリスク因子。異常を早期に発見するために、毎日血圧を測定するよう指導する。
- 減塩・禁煙・ストレス管理など、生活の見直しも必要。具体的な食事の工夫や内容について、栄養士から指導してもらう。
- 再発の早期発見のために、症状がなくても定期的な診察、脳画像検査などを受けるよう勧める。
- 「突然の激しい頭痛」や「急な意識障害」「吐き気」など、くも膜下出血の再発兆候を、患者さんや家族とあらかじめ共有しておく
症状によっては自分で救急車を呼ぶことは困難な場合もあるよね。家族や周囲の方にも、くも膜下出血について理解してもらうことで、迅速な対応につながるんだよ。

くも膜下出血を振り返ってみるよ!
「くも膜下出血」解説記事のまとめ
- くも膜下出血は突然発症し、高い致死率を示す緊急性の高い疾患。
- 主な原因は脳動脈瘤の破裂で、再出血のリスクも高い
- 治療は再出血の予防が中心で、開頭クリッピング術やコイル塞栓術といった外科的治療が選択されることが多い
- 三大合併症は「再出血」「脳血管攣縮」「正常圧水頭症」
- くも膜下出血の看護は、スピード感と、異常を見逃さない観察力が求められる

合併症の予防は、身近な看護師の大きな役割。
緊張するけど、「ささいな変化」に気が付けるように観察力を上げていきたい!
観察やアセスメントする力がつけば、もっと自信をもって受け持てる気がするよ…!


