侵襲的陽圧換気療法(IPPV)

人工呼吸器がついている患者さんって、怖くて近づけないよ~。
いずれ受け持ちなんてできるかな…

特に気管挿管をされている患者さんは、観察項目も多いし、
緊張感があるよね。

機械のことだけでも覚えることがいっぱいで…。

一つずつしっかり理解していこうね!
侵襲的陽圧換気療法について解説していくよ!

解説記事で学べること!

侵襲的陽圧換気療法(IPPV)の適応

IPPVの適応は、
「自分の力だけで呼吸を維持できない人」

気管挿管をして侵襲的陽圧換気を導入するのは、患者さんの呼吸機能が大きく落ち込んで、命を守るために機械による補助が必要なときなんだ。

気管挿管下人工呼吸器の主な適応

大きく分けると次の3つになるよ。

  • 低酸素血症や高二酸化炭素血症をきたす呼吸不全
  • 舌根沈下や咳嗽反射の消失などによる気道防御機能の破綻
  • NPPV(非侵襲的陽圧換気)で改善しない呼吸不全

IPPVは、肺胞換気を維持しながら呼吸の負担を減らし、ガス交換を改善して全身に十分な酸素を届けることを目的としているんだ。さらに、組織の虚血が進むのを防ぐ効果も期待できるよ。

適応を考えるサイン

現場では患者さんの「見た目や症状」から人工呼吸の必要性を判断することも多いんだ。

観察できる様子考えられるサイン
肩や首の筋肉を使って息をしている努力呼吸(補助呼吸筋使用)
途中で息が切れて会話が続かない一文を話せない呼吸困難
呼吸が速くて浅い頻呼吸
酸素を与えてもSpO₂が低下低酸素血症の進行
ぼんやりして返答が鈍い意識障害

適応判断の基準

最終的に人工呼吸器を導入するかどうかは、数値と全身状態を組み合わせて総合的に判断されるんだ。

  • pH、PaCO₂、PaO₂、SpO₂が治療目標範囲から逸脱している
  • 呼吸仕事量が増加している
  • 意識レベルが低下している
  • 循環動態が低下し、補液や薬剤に反応がみられない

生命維持に大切な治療だけど、一方でリスクもある。
導入は患者さん本人と家族の意向も含め、慎重に行われるんだ。
さらに、長期に及ぶ場合には、気管切開の検討も必要だよ。

気管切開への移行

経口挿管が長期化しそうなときは、合併症リスクを下げるために気管切開への切り替えが検討されるよ。

例えばこんな場合は、検討が必要なんだ。

  • 離脱までに時間がかかる
  • 分泌が多く窒息リスクが高い
  • 口腔ケアが難しい
  • 深い鎮静が必要

気管切開に切り替えるメリットとして、口腔・声帯の損傷を避けやすい、口腔ケアがしやすい、鎮静を減らしやすいという点があるよ。早期離床やせん妄の予防、吸引のしやすさにつながり、ウィーニング(機械からの離脱)が進めやすくなるんだ。

一方で、処置は侵襲的だから、出血や感染のリスクがあること、気管狭窄などの遅発合併症、発声・嚥下への影響や誤嚥リスク、カニューレ管理(カフ圧・交換・皮膚トラブル)が継続的に必要といったデメリットもあるよ。療養環境や周囲の介護力なども考えて検討する必要があるんだ。

侵襲的陽圧換気療法(IPPV)の種類と特徴

人工呼吸器って設定や機能がありすぎて全然覚えられない…!

人工呼吸器には、患者さんの状態に応じていくつかの換気モードがあるよ。モードごとの違いを理解しておくと、患者さんの呼吸状態を把握しやすくなるんだ。

基本モード

人工呼吸管理の中心となる3つのモード。「強制換気がメインなのか」「自発呼吸を活かすのか」で特徴が変わるんだ。

モード特徴必要設定項目注意点
A/C
(Assist Control)
自発呼吸があってもなくても、設定された換気量や圧で強制換気を行う・一回換気量
(または吸気圧)
・呼吸回数
・吸気流量/吸気時間
・PEEP
・FiO₂
自発呼吸が多いと過換気のリスクがある
SIMV設定回数までは強制換気、それ以上の自発呼吸にはPSでサポートをする・換気回数
・一回換気量
(または吸気圧)
・PS圧
・PEEP
・FiO₂
強制換気と自発呼吸のバランスに注意
CPAP強制換気はなく、自発呼吸のみに持続的に圧をかける・PEEP
・PS圧
(必要に応じて)
・FiO₂
呼吸努力が弱い患者には不向き

送気方法

モードの中でも「どうやって肺に空気を送るか」で2つの方法があるよ。

種類特徴注意点
VCV(従量式換気)1回換気量が保証される気道抵抗・肺コンプライアンスの低下で気道内圧が上がりやすく、圧損傷のリスクがある
PCV(従圧式換気)設定した圧で一定時間吸気
生理的な呼吸に近い
換気量が変動しやすく、低換気のリスクがある

補助機能

より患者さんの呼吸を安定させるために、基本モードに組み合わせて使うよ。

機能特徴使用できるモード
PS
(Pressure Support)
自発呼吸をトリガに吸気を補助。呼気は流速低下で切り替えSIMV、CPAP
PEEP
(Positive End-Expiratory Pressure)
呼気終末に陽圧をかけ、肺胞の虚脱を防ぎ酸素化を改善A/C、SIMV、CPAP

モードや送気方法が理解できると、設定が変わったときに「なぜその方法を選んでいるのか」という根拠がみえてくるよ!

侵襲的陽圧換気療法(IPPV)管理中の観察ポイント

人工呼吸管理中は、患者さんの状態と人工呼吸器の動作を両方観察することが大切だよ。「ABCDEバンドル」を活用して、毎日順序だてて評価していくのが推奨されているんだ。

ABCDEバンドルに基づく観察

ABCDEバンドルは、人工呼吸器からの離脱促進・ICU滞在日数の短縮・死亡率の低下に効果的と言われているよ。

人工呼吸器と回路のチェック

観察は患者さんだけでなく、機械の状態も欠かせないんだ。

  • 設定値と作動状況(換気量、気道内圧、FiO₂、PEEPなど)が一致しているか
  • 呼吸回路の結露や水の貯留、フィルタの汚染がないか
  • 加温・加湿器や人工鼻が正しく機能しているか
  • 警報設定が適切か、異常音がないか
  • グラフィックモニターでの波形変化

   気道内圧が上昇している → 回路閉塞や痰の貯留を疑う
   圧が下がっている → 回路リークや外れを疑う

人工呼吸器の設定やメンテナンスは治療に直結するよ。
勤務ごとに複数人でのチェックが大切!

合併症の早期発見

侵襲的陽圧換気には、肺や循環・全身に合併症が引き起こされるリスクがあるんだ。観察の中で、こうした兆候を見逃さないことが重要だよ。

  • VALI(人工呼吸器関連肺障害)
     圧や換気方法による肺の障害→ 気胸、皮下気腫、縦隔気腫、無気肺
  • VAP(人工呼吸器関連肺炎)
     人工呼吸管理中の感染症→ 発熱、痰の性状変化、レントゲン浸潤影
  • 酸素関連合併症
     高FiO₂で起こる酸素中毒
  • 循環動態への影響
     胸腔内圧上昇による静脈還流低下、心拍出量低下、血圧低下
  • 深部静脈血栓症(DVT)

 長期臥床により血栓形成のリスクあり → 予防的にヘパリンを使用することがある

  • ストレス性潰瘍:重症ストレスで消化管に潰瘍ができることがある → 予防的にPPIを投与することがある
  • 長期鎮静管理、過鎮静による合併症:頭蓋内病変などを見逃してしまうリスクがある
  • 口腔トラブル:挿管チューブ固定によるMDRPU、噛みしめによる歯の損傷など
  • 疼痛、不眠、せん妄

患者さんに呼吸器に合併症のサイン……
観察するところがいっぱいだ~!

侵襲的陽圧換気療法(IPPV)管理中の患者の看護

安全に管理することは大前提。
看護師は、患者さんや家族の不安に寄り添ってサポートすることも重要な役割だよ。

機器の管理と安全体制

人工呼吸器は生命維持装置。小さなトラブルが患者さんの命に直結するから、安全な体制づくりが欠かせないよ。チーム全体でしっかり安全を守ろう!

  • 人工呼吸器は必ず赤コンセント(非常電源)に接続する
  • バックバルブマスク(BVM)や酸素ボンベをベッドサイドに常備し、緊急時に備える
  • 設定変更や回路交換は二名体制で確認しながら行う
  • アラームが鳴ったら「まず患者を確認 → 原因究明 → 必要時は応援要請」の流れで対応する

身体面のケア

人工呼吸器をつけている患者さんは動きが制限されやすく、二次的な合併症が起こりやすい。日々のケアで防ぐことが大切だよ。

  • 体位変換や除圧で褥瘡を予防する
  • 口腔ケアや吸引で人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防を行う
  • 挿管チューブの固定部分の皮膚を観察し、発赤やびらんを早期に発見する
  • 加湿管理を行い、痰の粘稠化や無気肺の予防につなげる

鎮静管理と抜管予防

患者さんによっては、不安や苦痛からせん妄状態となり、抜管行動に至ることもあるんだ。まずは、疼痛コントロールを行い苦痛を取り除いたうえで、鎮静管理をしながら予防をしていくよ。

  • フェイススケールやNRS(数理評価スケール)など患者に合った評価方法で疼痛を評価し、鎮痛コントロールを行う
  • 鎮静薬は必要最小限に調整し、意識レベルを定期的に確認する
  • 抜管リスクがあるときは、身体抑制の前に鎮静や環境調整を検討する
  • 身体抑制を行う場合は、本人・家族への説明と記録を忘れない
  • 身体抑制中はこまめに観察し、身体抑制解除についてチームで検討する
  • ケアを行う際には、一人で行わず、複数人で実施する

心理面のサポート

人工呼吸器は身体的な負担だけでなく、心理的な影響も大きい。患者さんや家族へのサポートも欠かせないよ。

  • 鎮静中でも声をかけたり手を握ったりして、安心感を与える
  • 本人が理解できる場合には、人工呼吸を行う目的や流れを説明する
  • 家族には「反応がないのは鎮静で意図的に眠らせているから」と伝え、不安を和らげる
  • 不安や戸惑いを聞き取り、安心できるように情報提供や傾聴を行う

人工呼吸器の管理は“安全”と“安楽”の両立が大事なんだね。患者さんと家族に寄り添いながら、安心できる環境をつくっていこう!

侵襲的陽圧換気療法を振り返ってみるよ!

「侵襲的陽圧換気療法」解説記事のまとめ
  • IPPVの適応は「自分の力だけで呼吸を維持できない人」
  • 人工呼吸器の目的は、換気維持・呼吸仕事量の軽減・酸素化改善・虚血進行の防止
  • 基本モードにはA/C、SIMV、CPAPがあり、強制換気と自発呼吸のバランスで特徴が異なる
  • 観察はABCDEバンドルを使い、鎮静、呼吸、鎮痛・鎮静の調整、せん妄、早期離床を順序立てて評価する
  • 看護師の役割は機器の安全管理に加え、褥瘡・肺炎予防や皮膚観察などの日常ケアを行うこと

覚えることはたくさんだけど、患者さんの命を守るためだもんね!がんばります!!

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