循環不全(ショック) 

この前、患者さんが冷や汗かいたりしてて、なんだか様子が変だなとは思ったんだけど、「ショックかも」って気が付けなくて…。

「何か変」と気付けたのはいいこと!循環不全(ショック)についてしっかり学んで、次の一歩を踏み出してみよう!

解説記事で学べること!

循環不全(ショック)の病態

循環不全(ショック)とは、体の各臓器に必要な血液や酸素が十分に届かなくなった状態のこと。つまり「臓器への血液の流れ(臓器灌流)が低下し、細胞レベルで酸素が不足してしまう」状態を指すよ。

この状態が続くと、細胞の働きが低下し、やがて細胞死に至り、多臓器不全(MOF)に繋がる危険性がある。ショックは未治療であれば命に関わる危険な状態で、原因によっては、治療しても致死率が高いケースもあるんだ。

ショックが起こるメカニズムは、以下のとおり。

  • 絶対的な酸素供給の低下(血液量そのものが足りない)
  • 相対的な酸素供給の低下(血液はあるがうまく臓器に流れない)
  • 酸素利用の障害(酸素が供給されても、細胞がうまく利用できない)

例えば、出血脱水などで血液量が減れば全身への血流が低下するし、心臓のポンプ機能が低下すれば血液を送り出せない。また、感染症アレルギーで血管が異常に拡張すると、血圧が保てず血流が不足することもあるよ。

ショック=低血圧と思われがちだけど、初期のショックでは血圧が正常な場合もある。これは体の代償機能が働き、一時的に血圧を保とうとするためなんだ。だから「血圧が正常だからショックではない」とは判断できないんだよ。

臨床では、収縮期血圧が90mmHg未満、または普段の血圧より30mmHg以上低下している場合に「ショックを疑う目安」とされている。ただし、これはあくまで一つの指標であり、基礎疾患や発症からの時間なども含めて診断されるよ。動脈硬化などがある高齢者では軽度の低下でも急変する場合があるため注意しよう。

ショックは原因により4つに分類される。早急に原因を特定し、適切な対応が必要!

分類特徴主な原因対応
循環血液量減少性血液の量が足りず、全身に血液がまわらない大量出血、脱水、熱傷輸液、輸血、止血
血液分布異常性血管が拡がりすぎて血圧が下がる(血液量は正常)敗血症、アナフィラキシー、脊髄損傷輸液、血管収縮薬、抗菌薬
心外閉塞・拘束性心臓の周りの問題で、血液が送り出せない肺塞栓、心タンポナーデ、緊張性気胸輸液+原因への処置
心原性心臓の働きが弱って血液を送り出せない心筋梗塞、心筋炎、不整脈、弁膜症昇圧薬、補助循環、原因治療

循環不全(ショック)の症状

ショックは、酸素の供給不足と、それを補おうとする身体の代償反応により、以下のような症状が出現するよ。

  • 意識障害(うとうとする、ぼーっとする、反応が鈍いなど)
  • 頻脈
  • 低血圧(特に収縮期血圧90mmHg未満)
  • 乏尿
  • 末梢の冷感
  • 呼吸回数の増加(頻呼吸)
  • 冷や汗(交感神経の緊張による)
  • 嘔気・気分不良
  • 皮膚の色の変化(蒼白、網状皮疹など)
  • 乳酸アシドーシス(代謝の異常による)


さらに、ショックの原因となる病態(感染・出血・心疾患など)によっても症状は異なる。

ショックの5Pとは

「ショックを疑う重要な5つの身体的サイン」として、次の“5P”がある。1つでも当てはまればショックを疑い、早急な対応が必要なんだ。

毛細血管再充満時間(CRT)の測定方法

CRT(Capillary Refill Time)は、末梢循環の状態を簡単にチェックできる方法だよ。

<測定手順>

  1. 手指(通常は指先や爪の下)を5秒間しっかりと圧迫して、色が白くなるのを確認。
  2. パッと圧を離し、色がピンク色に戻るまでの時間を測る。

通常は、2秒以内に元の色に戻る。しかし、3秒以上かかる場合は、末梢循環の障害が疑われるため、バイタルサインの測定と全身状態を観察しよう。

循環不全(ショック)の検査

ショックが疑われる場合、原因の特定と治療方針の決定のために速やかな診断が求められるよ。原因の中でも、重症度の高い疾患の可能性を除外していくのが一般的。

超音波検査

ショック患者の初期評価において、超音波検査は非常に重要な検査。心エコーや肺エコーを活用した「FALLSプロトコル」が広く用いられていて、ショックの原因に応じてアプローチを変え、診断を迅速に進めることができるよ。

心エコーでは以下の点を評価する。

  • 心筋の収縮能:心拍出量の低下を評価し、心原性ショックの可能性を検討
  • 心嚢液の有無(タンポナーデ):心膜腔に体液が貯留していれば、閉塞性ショックの原因に
  • 心室の動きや形状:心室の拡張・収縮状態から、心不全や壁運動異常を確認
  • 弁膜症の有無:急性の弁膜症によるショックの可能性を考慮
  • IVC(下大静脈)の虚脱具合:IVCが虚脱していれば、低容量状態と考えられ、血液量減少性ショックの指標となる

超音波検査は、ベッドサイドで実施でき、状態の変化に応じリアルタイムで患者の様子を把握できる検査。ショックの重症度や経過の把握に役立つよ。

血液検査(血液ガス・血液培養)

ショックの評価や原因特定には、血液検査も重要な役割を果たすよ。

血液ガス検査はまず乳酸値に注目。ショック状態では組織への酸素供給が不足し、嫌気性代謝が進むことで乳酸が産生されるんだ。値が高くなると、組織の低酸素状態や代謝性アシドーシスの状態が疑われるよ。

また、混合静脈血酸素飽和度(SvO₂)の測定が重要。SvO₂の低下は、末梢組織での酸素消費量が供給を上回っている状態を示し、早期のショック状態の指標となるよ。動脈血酸素分圧(PaO₂)、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)、pHからも酸塩基平衡や換気の状態を把握し、代謝性アシドーシスの有無を確認しよう。

血液検査においては以下の項目に注目しよう。

  • CBC(白血球・貧血など):炎症や出血の有無を確認
  • CRP・プロカルシトニン:炎症反応や感染の程度を把握
  • 電解質・腎機能・肝機能:臓器への血流低下による多臓器への影響や全身状態の評価
  • D-ダイマー:肺塞栓症やDICなど、凝固異常のスクリーニング

さらに、ショックの原因が感染であるかを判断するためには、血液培養が実施されるよ。特に敗血症性ショックが疑われる場合は、病原菌の特定が治療方針の決定に大きく影響するため、速やかな培養検査が求められるんだ。

12誘導心電図

12誘導心電図は、心臓が原因となる心原性ショックの鑑別にとても重要な検査だよ。不整脈虚血性変化(心筋梗塞の兆候など)を把握することで、ショックの直接的な原因が心臓にあるかどうかを確認できる!

注目する所見は以下のとおり。

  • 心筋梗塞の有無:ST上昇や異常Q波の有無を確認し、急性冠症候群によるショックの可能性
  • 不整脈の検出:心房細動、心室頻拍、完全房室ブロックなど、心拍出量を急激に低下させるリズム異常の確認
  • 電解質異常の所見:高カリウム血症や低カリウム血症による波形変化
  • 肺塞栓や心膜炎の兆候:右室負荷やPR間隔の変化などから、間接的にこれらの疾患が疑われる場合がある

また、心筋梗塞による虚血性の変化(ST変化)が確認された場合は、緊急の循環器的治療(カテーテル治療など)に進む判断材料となるよ。

胸部レントゲン写真

胸部レントゲンは、肺や縦隔の異常を評価するための基本的な検査で、呼吸器や心臓に関わるショックの原因を見つける手がかりになるんだ。

特に以下の病態の発見に役立つよ。

  • 肺炎・無気肺・胸水:緊張性気胸、大量血胸などの早急に処置が必要な病態や、感染性ショックの原因を評価
  • 心拡大像・肺うっ血:心不全による心原性ショックの可能性
  • 気胸・縦隔気腫:閉塞性ショックの原因として緊張性気胸などの疑い
  • 大動脈の拡張や不整な陰影:大動脈解離の発見

レントゲン撮影は、短時間でベッドサイドで実施できるから、発見後、早期に実施されるよ。

循環不全(ショック)の治療

ショックの治療は、全身に血液と酸素を届けることが優先される。原因ごとに適切な治療を行う必要があるよ。

輸液負荷

ほとんどのショックでは、まず輸液(ボリューム負荷)が初期治療。血管内の液体量を増やすことで血圧を上げ、組織への血流を改善するよ。

具体的には、リンゲル液のボーラス投与(一気に一定量を静注)などが行われる。心不全の既往がある患者には慎重な対応が求められるけどが、明らかなうっ血がない限り、循環が安定するまでは輸液を優先すべきとされているよ。

同時に、輸液量の調整にはCVP(中心静脈圧)やPAOP(肺動脈楔入圧)などのモニタリングも行われることがあるよ。

血液製剤(輸血)

出血性ショックが疑われる場合には、赤血球製剤・新鮮凍結血漿・血小板製剤を1:1:1の比率で迅速に投与することが推奨されているんだ。

特に大量出血時には、単に赤血球だけを補うのではなく、凝固因子や血小板も同時に補うことで止血機能を保つよ。

また、アルブミン製剤も、血漿分画製剤という血液製剤の一種。アルブミンは、浸透圧を利用して血管内に水分を保持する働きがあるから、敗血症などの血液分布異常性ショックのときはよく使われるんだ。

薬物治療

輸液を行っても血圧が十分に上がらず、さらに挿管などの侵襲的処置が必要になる場合は、昇圧薬強心薬の使用が検討されるよ。

  • ノルアドレナリン(第一選択):血管収縮作用が強く、近年は心原性ショックや敗血症性ショックでもよく使用される
  • アドレナリン:頻脈を起こしやすいため、アナフィラキシーショックでは、第一選択になる
  • ドパミン:以前はよく使われていたが、不整脈や死亡率が高いとの報告があり、使用頻度は減っている
  • ドブタミン:β2作用があり、血圧をあまり上げずに心拍出量を改善するが、単独で使う場面は少ない
  • バソプレシン(抗利尿ホルモン):アシドーシスなどでカテコラミンが効きにくい状況で補助的に使用される

急変時はノルアドレナリンが第一選択であると覚えておこう。ショックを脱した後の血圧コントロールは、原因や病態を考慮し選択されるよ。

抗菌薬の投与

敗血症性ショックでは、治療の遅れが直接予後に影響する。発症後、ルート確保とともに血液培養を行い、1時間以内に広域抗菌薬の使用が推奨されているんだ。

広域抗菌薬は、カルバペネムとバンコマイシンが選択されることが多いよ。血液培養の結果に応じて、抗菌薬の変更が行われるよ。

酸素療法

ショック状態は、全身の酸素供給が不足している状態だから、酸素投与は必須状態が重度で呼吸が不十分な場合には、気管挿管を行い、人工呼吸器による管理も検討されるよ。

呼吸状態を観察しながら、効果的に酸素投与が行えるデバイスの選択と管理を行おう。

酸素療法の詳しい解説はこちら👈

循環不全(ショック)の看護

ショック時の看護で優先されるのは、早期発見と初期対応!発見から治療までのスムーズな移行が大切だよ。

ショック症状の早期発見と初期対応

ショック症状となった患者さんを早期に発見できるのは、身近な看護師。普段から全身状態を含めたアセスメントしながら、幅広い視点で観察をしよう。

特に、いつも穏やかな方が不穏や興奮状態となった場合には、ショックを起こしている可能性を考えて対応するよ。不穏は精神的な不安だけでなく、脳への血流低下や代謝性アシドーシス、痛みによっても引き起こされるんだ。

また、酸素飽和度だけでなく、呼吸回数呼吸様式にも注目しよう。頻呼吸は、体内が酸性に傾いた状態で、二酸化炭素を排出しようとする代償反応として現れる。呼吸数が1分間に20回を超える場合は注意が必要だよ。

持続的なモニタリング

ショックの治療では、輸液などの治療に対して、身体がどう反応しているかを継続的に観察しよう。

重症例では、先端バルーン付き肺動脈圧カテーテル(スワンガンツカテーテル)を挿入することもある。CVP(中心静脈圧)PAOP(肺動脈楔入圧)心拍出量などを測定することで、循環動態を客観的に把握していくよ。

ベッドサイドモニターを使用した持続的なモニタリングを行い、数値の変化や正しく測定できているか注意しよう。

適切なルート管理

ショック患者には複数の薬剤や輸液が必要になるため、ルートは複数本確保されることが多い。大量の輸液や輸血に備え、20G以上の太めのルートが推奨されているよ。ショック時には末梢血管が締まりルート確保はより難しくなるけど、落ちついて血管を探そう。

また、薬剤の投与経路や流量、併用について、医師や薬剤師と連携して確認し、投与間違いのないよう注意。シリンジポンプや輸液ポンプなどのME機器を使用し適切に投与しよう。

また、感染予防ルート抜去のリスクにも注意し、清潔操作や固定方法の確認が重要だよ。

インアウトバランスの観察

体内の水分出納バランスを継続的に確認しよう。

大量の輸液負荷を行うショック状態では、尿道カテーテルを用いて尿量を正確に測定。輸液量と尿量のバランスに注目し、尿量が少ない場合には、血圧や中心静脈圧、呼吸状態なども観察し、医師へ報告しよう。

また、尿量や輸液量に伴い、昇圧剤など薬剤の流量を変更する指示が出されることも少なくないよ。ダブルチェックを徹底し、間違いのないよう実施しよう。

急変に備えた準備

ショック状態の患者さんは病状が変化しやすいよ。だから、不整脈心停止の可能性を考え、救急カートの準備や動きやすい導線の整理を行っておこう。

日ごろから急変時の対応手順をチームで確認しておくといいよね!

また、患者さんやご家族への丁寧な説明は、看護師としての大切な役割の一つ。普通に生活していた家族の急変はご家族にとっては受け入れがたいもの。医師からのICには同席し、理解できているかを確認しよう。ご家族に寄り添った声かけも大切だよ。

循環不全を振り返ってみるよ!

「心筋梗塞」解説記事のまとめ
  • 循環不全(ショック)とは、「血液循環が破綻し、組織に必要な酸素や栄養を届けられなくなった状態」のこと
  • 対応が遅れると生命にかかわる重篤な状態
  • ショックの症状は5Pで覚える
  • 治療は、組織灌流と酸素供給の回復を第一優先にする
  • 看護師は、ショック症状の早期発見が大切。焦った時こそ、冷静に判断できるように備える

緊急性の高い治療や対応が求められるけど、
次はもっと落ち着いて行動できるようにします…!

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