発熱

受け持ち患者さんが39度の熱があったから、クーリングしようとしたら先輩に止められて…。熱が出たら冷やすのは普通じゃないの?

その患者さんの他の症状は?発熱の原因は何だろう?時期によっても、クーリングは患者さんにとって心地の良いケアになるとは限らないんだ。発熱について詳しく復習していこう!

解説記事で学べること!

発熱の病態

発熱とは、体温が平常より高くなっている状態のことをいうよ。

私たちの体温は、脳の「視床下部」という部分にある「体温調節中枢」によって、常に一定に保たれているんだ。この調節機能のおかげで、健康なときは平熱を保っているんだ。

でも、ウイルスや細菌などが体に入ると、体温調節中枢に「体温をもっと高くしよう」という指令が出される。これは体の防御反応のひとつで、病原体に対抗するために起こるんだ。このとき、体は震えたり、血管を収縮させたりして熱を作り、発汗を抑えて体温を上げようとする。これが「発熱」だよ。

高熱になると体の代謝が活発になり、心拍数や呼吸数が増えるなど、体に大きな負担がかかるんだ。だから、発熱時には時期に応じた観察と対応が必要だよ。

体温は、測る場所や時間帯によって差が出ることがあるよ。たとえば、腋窩の体温は、口腔内より約0.3~0.5℃低く、逆に直腸では0.8~0.9℃高くなる傾向がある。また、体温は1日の中でも変動し、朝は低め、夕方にかけて高くなるのが一般的だよ。

一般的な体温の目安は以下のとおり。

  • 平熱:おおよそ36.0〜37.0℃(個人差あり)
  • 微熱:37.0〜37.5℃
  • 発熱:37.5℃以上
  • 高熱:38.0℃以上

こうした体温の基準を踏まえたうえで、患者さんの平熱を知っておくことが、異常の早期発見につながるんだ。

特に小児は、成長発達の途中で体の体積に比べて体表面積が大きく、皮膚の下にある脂肪や筋肉が少ないから、体温の変化を受けやすい特徴があるよ。外気温の影響で、体温が上下しやすいため、観察の際は注意が必要なんだ。

酸素が届かなくなった心筋は20分程で壊死が始まり、元に戻ることはない...。
つまり、発症後の迅速な対応が予後に大きな影響を与える病気なんだ。

発熱のパターンは「熱型」とよばれ、以下の4つに分類されるよ。

熱型特徴
稽留熱(けいりゅうねつ)1日の体温の変動が1℃以内で、ずっと高熱が続く
弛張熱(しちょうねつ)1日の体温変動が1℃以上あるが、最も低くても平熱までは下がらない
間歇熱(かんけつねつ)1日の体温変動が1℃以上あり、平熱と高熱を繰り返す
波状熱(はじょうねつ)高熱と平熱が数日~数か月単位で不規則に繰り返される

また、「不明熱」と呼ばれる原因不明の発熱もあるよ。38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、1週間の検査入院でも原因が分からないものを指すよ。

発熱の経過は大きく3つの時期に分けられるよ。

  1. 上昇期:体温が上がる時期。悪寒、震え、倦怠感、関節痛などが見られる。
  2. 極期:体温がピークに達した時期。悪寒は消え、顔が赤くなったり、強い倦怠感が出たりする。
  3. 解熱期:体温が下がる時期。大量の発汗が見られる。水分補給が大切。

発熱の原因

発熱の原因はさまざまで、以下のような病気が関係しているんだ。

  • 感染症(風邪、肺炎、尿路感染症など)
  • 非感染性の炎症(膠原病、血管炎など)
  • 悪性腫瘍(がんなど)
  • その他(薬の副作用、血栓症、肺塞栓など)

原因によって対応が異なるから、正確な観察と情報収集が大切だよ。

発熱の症状

発熱に伴う主な症状には、以下のようなものがあるよ!

  • 全身症状:悪寒(シバリング)、倦怠感、意識障害、脱力感、頻脈、頻呼吸、低血圧
  • 消化器症状:腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振
  • 呼吸器症状:咳、鼻づまり、咽頭痛、飲み込みにくさ、声のかすれ
  • 泌尿器症状:頻尿、排尿時痛、残尿感、腰痛
  • その他:関節痛、皮膚の発赤・腫れ

発熱の背景にある疾患の特定には、現病歴海外渡航歴感染症患者との接触歴などの問診も重要だよ。身体所見とあわせて、本人・家族からの情報収集を行うよ。

また、発熱に伴う脱水症状や、小児でみられる熱性けいれんは、重篤な合併症のサインになることがあり、見逃してはいけないよ。

脱水

発熱時は、汗をかいているように見えても、実は発汗が減っていることが多く、皮膚や口の中が乾燥している場合は脱水が進行している可能性があるよ

特に以下のような症状があれば注意が必要。

  • 口腔内や舌の乾燥
  • 脇の下が乾いている
  • 尿量減少・尿が濃い
  • 皮膚のツヤがない、立ちくらみなど

脱水予防には水分と塩分のバランスのとれた補給が大切。特に、高齢者はのどの渇きを感じにくく、症状が出にくいから、症状がなくても積極的に水分補給をすることが重要だよ。

熱性けいれん

熱性けいれんは、1996年の指導ガイドラインで「通常38度以上の発熱に伴って乳幼児に生ずる発作性疾患(痙攣性・非痙攣性を含む)で、中枢神経感染症・代謝異常・その他明らかな発作の原因疾患がないもの」と定義されているんだ。

つまり、乳幼児においては、発熱をきっかけにけいれんが起こることがあるということ。発作時間が短く、発達に影響しない単純型が多いけど、けいれんが長引く・左右差がある・繰り返すといった場合は、緊急性が高くなるよ。

3.発熱時の検査

発熱の評価では「どこで」「なぜ」熱が出ているのか(熱源検索)を明らかにすることが重要。特に感染症が疑われる場合は、次のような検査を組み合わせて行っていくよ!

簡易迅速検査

発熱の初期対応では、ウイルス性の感染症(COVID-19、インフルエンザなど)を素早く見極めることが求められる。簡易迅速検査は鼻腔・口腔から検体を摂取するだけで、約10~15分で結果が分かるよ。感染が確認された場合には、他の患者との隔離対応やスタンダードプリコーションなど感染対策が必要だよ。

特に、家庭内や学校・職場などで感染者が出ている場合や流行期には積極的に実施されるよ。

血液検査

血液検査では、体内で炎症や感染が起きているかどうかを確認するよ。

特に、白血球数(WBC)C反応性タンパク(CRP)は炎症や感染の有無の判断に役立つ検査項目だよ。

CRPが上昇する主な原因は、以下のとおり。

  • 細菌感染:肺炎、虫垂炎、脳炎など
  • 炎症性疾患:自己免疫疾患、膠原病など
  • 組織障害:心筋梗塞、急性膵炎、外傷など

その他に、赤沈(赤血球沈降速度)末梢血液像生化学スクリーニング検査なども併せて行い、病態の把握に役立てるよ。

尿検査

尿検査では、尿中の成分から腎臓や膀胱などの異常を推測するよ。

  • 試験紙法(尿スティック):尿蛋白、尿糖、尿ビリルビンなどを簡便にチェック。
  • 顕微鏡検査:赤血球や白血球、細菌などを詳しく観察。
  • 尿培養:感染が疑われる場合に、原因菌の同定と薬剤感受性を調べる。

尿検査により、尿蛋白尿ビリルビンなどが検出でき、尿路感染症や腎盂腎炎といった、泌尿器系の疾患などを見極めることが可能なんだ。

胸部レントゲン

肺炎の有無を確認する基本的な検査。風邪が長引いている、咳が強いなどの場合には積極的に撮影し、呼吸器系疾患の有無を観察するよ。

超音波検査

超音波検査は、体に負担の少ない画像検査で、ベッドサイドでも簡単に実施できる。発熱時には、腹部エコーや心エコーが用いられ、以下のような疾患を発見する手がかりとなるんだ。

  • 腹部エコー:胆嚢炎、腎盂腎炎、虫垂炎、肝膿瘍など
  • 心エコー:心内膜炎、心膜炎、心不全、敗血症性心筋症など

必要に応じ、CTやMRIなど他の画像検査と組み合わせ、診断していくよ。

CT・MRI

発熱の原因が、体内の深部感染や炎症、腫瘍と考えられるときには、CTやMRIを用いて詳しく精査する必要があるよ。

CT検査は、全身状態を詳しく把握することが可能で、肺・腹部・骨・血管などの評価に優れている。一方でMRI検査は、軟部組織や神経系の描写に優れており、骨髄・中枢神経・軟部組織の感染評価に適しているよ。

状況や緊急性に応じて必要な検査が選択されるよ。

髄液検査

髄液検査(腰椎穿刺)は、発熱時に中枢神経系の感染が疑われる場合に行われる検査。

髄液中の白血球数、蛋白濃度、糖濃度、培養結果などを調べ、感染の有無や原因(細菌、ウイルスなど)を判別するよ。

発熱に加え、頭痛、意識障害、けいれん、項部硬直(うなじが硬くなる)などの症状を伴う場合に、髄膜炎脳炎などの重篤な疾患を鑑別する目的で実施されるんだよ。

4.発熱の治療

発熱への治療は、症状の緩和原因の治療の2つの視点で行われるよ。必要に応じて、脱水予防やけいれんの対応も加わるよ。

解熱鎮痛剤

発熱による苦痛(頭痛、関節痛、倦怠感など)が強い場合には、解熱鎮痛薬や抗炎症薬を使用するよ。

よく使われる薬剤には以下のものがあるよ。

  • ロキソニン(ロキソプロフェン)
  • カロナール(アセトアミノフェン):小児や高齢者、妊婦にも使いやすい

ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、消化管障害や腎機能への影響に注意が必要。また、経口投与が難しい場合や、小児に対しては、座薬の解熱鎮痛剤が選択されるケースもあるんだ。

また、原因疾患が炎症性である場合には、炎症を抑えるために、副腎皮質ステロイド(ソルメルコート)が使用されることもあるよ。

熱性けいれんへの対応

生後6カ月~5歳ごろまでの乳幼児は、急な高熱により「熱性けいれん」を起こすことがある。けいれんが起きた際には、解熱と同時にけいれんそのものを止めるための治療が必要だよ。

熱性けいれんの予防として、発熱時にジアゼパム坐薬を使うケースもあるよ。これは、けいれんの既往がある子どもや、けいれんを起こしやすいと判断された場合に、医師の指示のもとで使用されるよ。

けいれんを繰り返す場合には、抗てんかん薬の内服が検討されることも。また、けいれんが長時間続く場合には、点滴による治療など、より積極的な対応が必要となるケースもあるよ。体温だけでなく、子どもの機嫌や反応など、より細かな観察が必要なんだ。

疾患に対する治療

解熱鎮痛剤の使用は対症療法だから、発熱の原因に対する根本的な治療を行う必要があるよ。

感染性疾患

発熱の原因が細菌感染の場合には、抗生物質が多く使用されるよ。肺炎や膀胱炎、虫垂炎といった細菌感染に対して、原因菌または、広範囲をカバーできる薬剤が選択されるんだ。抗菌薬は「どの菌か」によって選択・投与期間が変わる。指示された投与量と投与間隔を守った使用が大切だよ。

一方で、ウイルス感染には抗生物質は効果を発揮しないんだ。インフルエンザやHIV 、B型・C型肝炎など限定的な感染症を除き、他のウイルスに対する有効な治療薬はない。そのため、対症療法が中心となるよ。

その他の疾患

感染症以外の原因で発熱が見られる場合は、発熱そのものへの対処よりも、まずは発熱の原因となっている「原疾患」の治療が優先されるよ。

たとえば、以下のような非感染性疾患が原因となることがあるよ。

  • 中枢性(脳卒中)
  • 膠原病・血管炎症候群(例:リウマチ)
  • 悪性腫瘍(がん)
  • 薬剤の副作用による発熱(薬剤性発熱)
  • 深部静脈血栓症や肺塞栓
脳卒中による発熱

中枢性の発熱は、脳卒中によって視床下部などの体温調節中枢が障害されることで起こる、感染によらない発熱。発症から24~72時間以内にみられることが多く、血液検査や画像検査で感染の所見がないにもかかわらず熱が出るのが特徴なんだ。

くも膜下出血や脳出血で多く見られ、感染との鑑別が重要になる。感染が原因ではないため、抗菌薬では改善がみられず、クーリングや解熱剤の使用といった対症療法が中心になるよ。

こちらの記事もおすすめ◎
熱中症による発熱

熱中症の治療は、素早く体温を下げること・脱水を改善すること。重症の熱中症では、深部体温が40.5℃を超えることがあるよ。この状態が続くと、臓器に深刻なダメージを与える可能性が高まるんだ。

だから、積極的に体温を下げる「アクティブ・クーリング」という治療が行われるよ。アイスパックを使用したクーリングだけでなく、冷却ブランケットなどが使用されることもある。積極的にクーリングを行い、体温を38.0℃まで速やかに下げることが推奨されているんだ。

さらに、熱中症によって体内の水分や電解質が失われるから、経口補水液や、電解質を含んだ輸液を投与し、脱水症状の改善を目指すよ。

熱中症による高体温は、外部環境により体温が異常に上がった状態。だから、体温調節中枢に働きかける解熱剤では、効果が得られないんだ。肝臓や腎臓への負担を増やしたり、血液の凝固機能に悪影響を与える可能性もあるから、安易に使用しないよう注意しよう。

5.発熱時の看護

患者さんの発熱時は、ケアや薬剤投与のタイミングなど看護師の判断能力が問われる場面。発熱時の看護のポイントを解説するね!

バイタルサインと熱型の観察

体温は、同じ条件下でも測定部位による差が大きく出るよ腋窩での値なのか、膀胱や直腸などの中枢温での値なのかを、測定時間を含めしっかりと記録しておく必要がある。また、腋窩での測定の場合は、左右差にも注意が必要だよ。測定する部位に、クーリングによる冷えが残っていないかも考慮していこう。

発熱に伴い、呼吸数の変化がみられた場合は、全身状態悪化のサインかもしれない。体温だけでなく、脈拍血圧呼吸数などを定期的に測定し、注意深く観察することが大切だね。

また、発熱の「熱型」にも注目することが大切。熱が一日中続くのか、朝晩で差があるのか、あるいは一度平熱に戻る瞬間があるのかなど、熱のパターンを把握することで、疾患の性質や経過を推測できるよ。あわせて、寒気けいれん意識レベルの変化など、発熱に伴う症状も見逃さず観察することが、次に必要な看護ケアを判断する手がかりになるよ!

保温・クーリング

発熱には「上昇期」と「解熱期」があるよ。体温管理の看護では、この熱の経過に応じて保温やクーリングを行い、患者の不快感を軽減することが求められるんだ。

体温の上昇期には、患者が寒がることが多くみられる。この時期は、室温を少し高めに設定し、衣類や寝具を追加して身体を温めよう。一方で、体温が上がりきった後の解熱期には、患者が暑がったり、多量に発汗したりする。このときは室温を下げる、衣類や掛け物を一枚減らす、保冷剤や氷枕で冷やすなどの工夫が有効だよ。

冷却する際は、「首すじ」「わきの下」「足のつけね」といった太い動脈が通る部分を冷やすことで、効率的に体温を下げることができる。患者の反応を見ながら、安楽に過ごせるよう環境を整えよう。

適切な解熱剤の使用

解熱剤を使用する時は、患者さんの症状だけでなく、投与間隔・投与方法にも注意しよう。解熱剤を使う目安は、38~38.5度以上の高体温や、体温上昇に伴い心身の苦痛が強い場合となるよ。患者さんの様子や医師の指示に従い使用を検討しよう。

特に、熱が上がりきっていない状態(手足が冷たいなど)では、解熱剤を使っても効果が出にくいから、使用タイミングの見極めは重要。薬剤の使用後は、熱型の観察をし、再度解熱剤の使用を検討する場合には、投与間隔にも気を付けよう。一般的にロキソプロフェンは6時間以上、アセトアミノフェンは4~6時間程度の間隔を空ける必要があるよ。

また、内服が困難な場合は、座薬を使用することもある。制吐剤や抗けいれん薬の坐薬と併用する場合は、30分以上間隔をあける必要がある。もし坐薬がすぐに出てきてしまった場合は、形が残っていればそのまま入れ直し、15分以上経っていたり形がなければ様子を見よう。

薬剤使用後の体温や血圧の変動にも注意しよう!

脱水への注意

発熱時は発汗や不感蒸泄が増えることで、体内の水分が奪われやすくなるんだ。特に子どもや高齢者は脱水になりやすいから、こまめに水分摂取を促す必要があるよ。

子どもは体重あたりの水分量が多く、成長過程でエネルギーと水分を多く必要とするから、脱水のリスクが高まる。また、発熱による汗だけでなく、発熱に伴う頻呼吸によっても不感蒸泄が増加し、知らないうちに水分が失われてしまうことがあるから注意だよ。

高齢者の場合は、もともと水分を感じにくかったり、腎機能の低下によって水分を保持しにくくなっていることが多く、脱水に陥りやすい状態。

尿量、皮膚の乾燥、口腔内の状態などを観察し、脱水の兆候を早期にキャッチできるよう心がけよう。

発熱を振り返ってみるよ!

「発熱」解説記事のまとめ
  • 発熱には「稽留熱」「弛張熱」「間歇熱」「波状熱」といった4つの熱型があり、熱の経過は上昇期、極期、解熱期の3つの時期に分けられる
  • 発熱の原因は感染症(風邪、肺炎など)、非感染性の炎症(膠原病など)、悪性腫瘍(がんなど)、薬剤の副作用など多岐に渡る
  • 症状の緩和と原疾患の治療が優先される

時期に合った適切な処置と看護が必要だね。看護師の観察や対応能力が大切な病態ってことか…。患者さんが少しでも楽に過ごせるようにケアしていこうね!

解説記事で学べること!