
致死性不整脈


心電図って難しい……。教科書で見た波形と実際の波形が結びつかないから、なかなか読めない。この間もVTだ!って思って走ったら患者さん歯磨きしてたよ。

歯磨きVTってやつだね。でも、すかさず患者さんの元へ行けたのはいい対応!VTは命に関わる状況でもあるから、危険な波形は読めるようにしていこう。今回は致死性不整脈について学習していこう!
解説記事で学べること!
致死性不整脈の病態

不整脈とは、「正常な心拍のリズム(正常洞調律)」から外れたすべての心拍のことを指すよ。
軽い不整脈であれば症状がなく日常生活に支障をきたさない場合もあるけど、意識障害や呼吸障害をおこし、命に関わるような「致死性不整脈」も存在するんだ。
致死性不整脈は、心停止や突然死の原因となるから、早期発見と迅速な対応が重要!
不整脈のしくみ
心臓は、洞房結節から送られる電気信号によってリズムよく動いている。不整脈は、この電気の発生や伝わり方に異常が起きることで発生するよ。主に以下の2つの異常に分類される。
- 電気の発生の異常:本来は洞結節で作られるはずの電気信号が、別の場所から出てしまうことで異常な拍動が起こる。
- 電気の伝導の異常:電気信号が心臓内をうまく伝わらず、同じ場所をぐるぐる回ってしまう「リエントリー(興奮旋回)」という現象が生じる。
リエントリーとは?
通常、電気信号は1回通れば終わるけど、何らかの異常で信号が心臓内を再び巡ることで心筋を繰り返し刺激し、異常な速さの拍動を引き起こすよ。この現象は、心室細動(VF)や持続性心室頻拍(VT)の原因となるよ。
致死性不整脈の種類

致死性不整脈には、4つの種類がある。どれも脈が触れない=全身への血流が止まっている状態であり、「心停止」とみなして直ちに対応しないといけないよ!
心室細動(VF)
心室全体が小刻みに震えている状態で、全く有効な拍出ができていない。心電図上では、不規則かつ形の揃わない波形が連続し、QRS波は識別不能だよ。
数分以内に心拍・呼吸が完全に停止する危険な状態!
無脈性心室頻拍(VT)
心電図では幅広いQRS波が規則的に連続するけど、P派は確認できない場合が多い。心拍数は100〜250回/分と多くカウントさるけど、末梢では脈が触れない状態だよ。一見、血流があるように見えても、拍出が不十分で全身循環が止まってしまう。すぐにVFへ移行する可能性が高い状態だよ。
ただし、心室頻拍には脈が触れるものもある。この場合、患者さんは意識がはっきりしていて、自覚症状に乏しい場合も。脈が触れるかどうかが大切になるから、波形が出たら、直ちに脈の確認をする習慣を身に付けておこう!
無脈性電気活動(PEA)
心電図上は、一見「正常っぽい波形」が見えるものの、実際は心拍出がない状態。患者は、呼吸も脈も消失して、心臓は電気的には動いているけど、機械的収縮がない。
原因は多くが低酸素、低体温、心タンポナーデ、血栓(PE)などの可逆的要因であり、CPRと共に原因検索も必要だよ。
心静止(Asystole)
心電図がまっすぐな線(フラットライン)になっている状態。わずかな動きが見えることもあるけど、実質的な心電活動はないよ。
心臓の電気活動も機械的な動きも完全に停止して、最も予後が悪い不整脈といえる。
致死性不整脈の症状

致死性不整脈は、発症と同時に心臓の拍動が停止、または極端に不十分になるから、一般的な症状が出ることはほとんどないよ。
致死性不整脈が疑われる際にみられる典型的な症状は以下のとおり。
- 突然の意識消失:脳への血流が一気に途絶えるため、即座に意識を失う。
- 呼吸停止またはあえぎ呼吸(死戦期呼吸):心拍出がなくなることで呼吸も止まる。ごく初期にはしゃくり上げるような不規則な呼吸が見られることもある。
- 脈拍が触れない:頸動脈や大腿動脈での脈拍が確認できない。
- チアノーゼ・顔面蒼白・四肢冷感:循環停止により、皮膚が青白くなり冷たくなる。
- 呼びかけや刺激への反応がない:BLS開始の判断材料になる重要な徴候。
致死性不整脈のサイン
致死性不整脈は突然発生することが多いけど、発症直前に以下のようなわずかな前兆や変化がみられることがあるよ。
- 急なバイタルサインの変動:急激な血圧低下、心拍数の異常な上昇・低下、不整なリズムなど。
- 心電図波形の異常: 持続する心室性期外収縮(PVC)、多型性心室頻拍、QT延長、伝導ブロックの出現など。
- 不穏・落ち着かない様子: 意識はあるが、「苦しい」「変な感じがする」といった訴えや、表情の変化、落ち着かずソワソワする。
- 顔色の変化や冷汗:顔面蒼白、チアノーゼ、冷汗などの交感神経優位な反応が突然みられる。
- 一過性の意識障害やめまい感:「急にぼーっとする」「立ちくらみのような感じ」といった、軽い意識障害が出る場合も。
これらのサインを見逃さず、注意深く観察することで、迅速な発見・対応につながるんだ。
致死性不整脈の検査

致死性不整脈は、発症するとただちに心停止へつながる状態。原因検索よりも救命が最優先となり、細かな検査は心肺再開後に実施されるよ。
持続心電図モニタリング
致死性不整脈が出現した患者さんには、ベッドサイドモニターを装着するよ。治療中の波形確認にも必須だから、見やすく大きいモニターを選択しよう。
心拍再開後
心拍再開後には、致死性不整脈の背景にある心疾患を把握するため、以下の検査が行われるよ。
- 12誘導心電図:診断の基本となる心電図で、持続心電図よりも詳しく精査できる
- 胸部レントゲン:心拡大や肺うっ血の有無を確認
- 心エコー:心機能や弁膜症、壁運動の評価
- 冠動脈造影:冠動脈の狭窄や閉塞の評価
不安定な状態では実施されない検査もあるけど、致死性不整脈の原因検索として有用な検査。
致死性不整脈の治療

致死性不整脈の治療は、心停止への対応が第一優先。基本的にどの波形で合っても生命維持を目的に治療を行うよ。
BLS/ACLSに沿った対応
致死性不整脈は、有効な心拍が確認できない状態であり、即座にBLS(一次救命処置)/ACLS(二次救命処置)を開始する。
BLSの流れ
- 反応の確認(安全確認も含めて)
肩をたたきながら大声で呼びかける。反応がなければ次へ - 助けを呼ぶ(ナースコール/救急チームへ連絡)
同時に「AED持ってきてください!」と周囲に指示する - 呼吸と脈拍の確認(10秒以内)
胸の上下動を見て、「普段通りの呼吸」があるかを確認
頸動脈や大腿動脈で脈が触れるかも確認
⇒呼吸なし、脈なし → 心停止と判断し、ただちにCPRへ
【 胸骨圧迫(心臓マッサージ)】
- 胸の中央(胸骨)に両手を重ねて置く
- 強く(5〜6cm沈む程度)・速く(100〜120回/分)圧迫
- 圧迫と圧の戻りは1:1、絶え間なく継続することが最重要
【人工呼吸(可能な場合)】
- バッグバルブマスク
- 圧迫30回:人工呼吸2回のサイクルで継続
- 酸素が準備できる場合はすぐに装着
※院内では気道確保はBVMが中心。気管挿管はACLSで
【AED(除細動器)の使用】
- 電極パッドを装着 → 心電図を自動解析
- 「ショックが必要です」と表示されたら、全員患者から離れるよう指示する「ショックします!離れて!」
- 除細動ボタンを押す→直後に胸骨圧迫再開
【2分サイクルで繰り返し】
- 胸骨圧迫30回+人工呼吸2回のCPR
- AEDの解析と必要な除細動
- 脈拍・呼吸の再確認(ただし、胸骨圧迫の中断は最小限に)
ACLSの流れ
- 意識・呼吸・脈の確認
・呼びかけに反応なし+正常な呼吸がない+脈が触れない→心停止! - 胸骨圧迫・BLS開始
・胸骨圧迫
・可能なら人工呼吸(BVM) - AED/除細動器の装着 → 心電図リズムを確認
- 心拍再開(ROSC)を確認後、集中ケアへ移行
心拍再開(ROSC)後の治療
BLSやACLSにより心拍が再開(ROSC)したあとは、原因の精査と再発予防の治療が行われるよ。
致死性不整脈の背景に虚血性心疾患がある場合は、心臓カテーテル検査を行い、必要に応じてPCI(経皮的冠動脈インターベンション)を実施。また、難治性の心室性不整脈を繰り返すケースでは、再発による突然死を防ぐ目的で植込み型除細動器(ICD)の適応が検討されるよ。
さらに、心不全を合併している場合は、循環動態の管理や薬物治療によるコントロールが行われる。心停止後の患者は脳機能障害のリスクもあるから、必要に応じて低体温療法などの集中ケアが行われることもあるんだ。心拍が戻ったあとは、全身状態の安定化と長期予後を見据えたサポートが重要だよ!
致死性不整脈の合併症

致死性不整脈に対する治療では、命を救うための処置(BLS/ACLS)が優先されるけど、その過程でいくつかの合併症が生じることがあるんだ。
たとえば、胸骨圧迫による肋骨骨折や皮下出血、気胸などは比較的よく見られる。また、長時間の心停止では脳への血流が止まるから、蘇生後も意識が戻らない「低酸素性脳障害」が残る可能性があるよ。
さらに、誤嚥による肺炎、急性腎障害、出血(抗凝固療法やカテーテル治療に関連)も注意が必要。処置のあとは、呼吸・循環・意識レベルを細かく観察して、合併症の早期発見に努めよう。
致死性不整脈患者の看護

致死性不整脈の患者さんの看護では、正確なモニタリングと観察、そして急変に備えた対応力、さらには心理的な支援も重要な役割。ここでは、看護の現場で実際に求められるポイントを、具体的に見ていこう。
心電図のモニタリング
心電図モニターは、不整脈を早期に発見するための大切なツール。波形の判断に自信がなくても「おかしいかもしれない」と感じたときには、ためらわずに声を出して先輩や医師に相談することが何より重要だよ。
普段から波形を見る習慣をつけることで、小さな変化に気づきやすくなるよ。実際の心電図は、教科書に載っているような“正しい波形”でないことも多く、判断に迷う場面もあるよね。だからこそ、日頃から患者さんの平常時の波形を知っておくことが大切だね。
実際に致死性不整脈が出ているときは、心電図波形だけを見て判断するのではなく、患者さんの全身状態や表情なども合わせた観察が重要だね。
バイタルサインと症状の観察
心電図に変化があったからといって、必ずしも患者さんが苦痛症状を訴えるわけではない。中には波形の異常に気づいて駆け寄ると、「大丈夫ですよ」と笑っている患者さんもいる…。でも、それが“本当に大丈夫”なのか、“慣れてしまっているだけ”なのかを見極めるには、看護師の観察力が求められるんだ。
観察のポイントは、患者さんの普段の様子と比べて「いつもと違う」点に気づくこと。表情、呼吸の仕方、皮膚の色、汗のかき方、訴えなど、小さな変化を見逃さないようにしよう。そして、「何か変だな」と思ったら、迷わず医師に報告することが大切。判断に迷ったときは、一人で抱え込まず、チームで共有することが大切だよ!
急変時対応に向けた準備と行動
致死性不整脈の出現は、突然心停止となる可能性が高い状態。そうした事態に備えて、日頃からBLSやACLSの講習に参加したり、緊急時の対応についてシュミレーションをしておこう。
緊急時は、正確な判断と素早い行動が求められるけど、一番大切なのは「自分一人で何とかしようとしないこと」。患者さんをチームで看ているという意識を持ち、「怖い」「わからない」と感じたら、すぐに声を出して助けを求めよう。少しの違和感が異常発見の大きなきっかけになることもあるよ。
本人と家族の精神的サポート
致死性不整脈の出現により意識消失などを繰り返すと、患者さんやご家族は大きな不安を抱えてしまう。「いつまた発作が起きるのか」「どうにかならないの?」など、見通しの立たないことへの不安は、精神的に大きな負担となるよ。さらに、心電図モニターの音や忙しない医療従事者の行動が、より不安をあおることも…。
看護師は、こうした不安に寄り添うことも大切な役割。難しい医療用語は避けて、わかりやすい言葉で説明したり、話をじっくり聞いたりすることで、患者さんや家族が安心できる環境をつくることができるよ。
「何かあればすぐに呼んでくださいね」「一緒に見守っていきますね」といった声かけは、小さなことのように思えても、患者さんや家族にとっては大きな支えになるんだ。

致死性不整脈を振り返ってみるよ!
「致死性不整脈」解説記事のまとめ
- 致死性不整脈とは、心停止や突然死を引き起こす、危険な不整脈のこと。看護師には早期発見と迅速な対応が求められる。
- 症状は、血圧低下・失神・呼吸停止・ショック症状など。
- BLS(一次救命処置)とACLS(二次救命処置)を即座に開始。
- 「いつもと違う」「なんか変」に気付くことが大切。
- 一人で何とかしようとせず、チームで看護していることを忘れずに。

間違えることもあるかもしれないけど、まずは患者さんの無事が優先だね!怖がらずどんどん先輩に質問していこう!


