
酸素療法


酸素っていっぱい種類があって混乱する~!
同じ酸素なら1個にしてほしいよね!

種類が多いから、覚えることもたくさんあるよね。
でも一つずつ効果や目的があるんだよ。

えっ!?酸素飽和度が上がってればOKじゃないの?

その使い方はちょっと危険だな…。
酸素療法について学んでいこう!
解説記事で学べること!
酸素療法の適応

酸素療法は、指示に基づいて看護師が判断する場面が多いよ。酸素療法の適応についてはしっかり理解しておこう。
酸素開始の基準値の目安は以下のとおり。
動脈血酸素分圧(PaO₂)60mmHg未満
経皮的酸素飽和度(SpO₂)90%未満
急性期は92~94%を目安に開始することもあるよ。COPDやCO₂が溜まりやすい場合は、CO₂ナルコーシスのリスクが高まるから、88~92%を目安にすることもあるんだ。
酸素を投与中の目標値は呼吸不全の分類によっても違いがあるんだ。
- Ⅰ型呼吸不全(酸素化だけ低下):SpO₂ 94~98%
- Ⅱ型呼吸不全(酸素化+換気障害):SpO₂ 88~92%
- pHは7.35以上を維持するよう注意
FiO₂(吸入酸素濃度)はできるだけ100%を避け、必要な範囲で調整する。必要最低限のFiO₂で目標SpO₂を維持するようにするよ。高濃度酸素は酸素中毒や換気抑制のリスクになることもあるからね。

値もだけど、既往歴の確認って大事なんだね…!
酸素療法が適応となる病態は以下のものがあるよ。
さらに、目的によっても酸素療法の適応は分けられるんだ。
- 治療的酸素療法:低酸素血症の改善
- 予防的酸素療法:手術後、鎮静下、運動負荷試験など、低酸素血症が予測されるとき
- 特殊目的:高気圧酸素療法(CO中毒、減圧症など)

基準値・目標・病態・目的を覚えておくと、
「酸素が必要かどうか」の判断がしやすくなるよ。
酸素療法の種類と特徴

酸素療法は、低流量システムと高流量システムの2つに分けられるよ。まずは種類とそれぞれの特徴を覚えていこう!
①低流量システム
患者の吸気量に対して酸素供給量が少ないため、室内気が混ざってFiO₂(吸入酸素濃度)が一定にならないのが特徴。吸気量が多い人ほど酸素が薄まるんだ。
- 鼻カニューラ
流量:1〜6L/分
(※5L以上の場合は加湿が必要→マスクへの変更を検討する)
特徴:会話や飲水がしやすい。6Lを超えると鼻粘膜刺激・乾燥のリスク。常時口呼吸の患者には不向き。 - 簡易酸素マスク
流量:5〜8L/分
特徴:5L未満ではCO₂再呼吸の危険あり。低濃度酸素吸入には不向き。 - 開放型酸素マスク
流量:5~10L/分
特徴:低流量でもCO₂再呼吸が起こりにくいが、あまりに低いとFiO₂が不安定になるため5L以上を確保することが多い - リザーバーマスク
流量の目安:10〜15L/分
特徴:バッグを常に膨らませて使用する。そのため、バッグがしぼまないよう10L以上に設定する。最大でFiO₂ 90%以上も可能
②高流量システム
患者の吸気量を上回る流量で酸素を供給できるため、FiO₂を正確に設定できるのが特徴だよ。Ⅰ型・Ⅱ型呼吸不全の両方に使えるんだ。
- ベンチュリーマスク
色付きのアダプターで酸素濃度(FiO₂)を正確に設定できる高流量システム。呼吸状態や換気パターンに影響されにくく、COPDなどⅡ型呼吸不全で過剰酸素を避けたい場合に有効なんだ。
流量はアダプターに応じて設定し、濃度と流量の対応表を確認するよ。 - ネーザルハイフロー(HFNC)
高流量(30〜60L/分)で加温加湿した酸素を鼻から供給し、FiO₂を21〜100%まで正確に設定できるよ。鼻咽頭の死腔換気を減らし、PEEP効果で肺胞を開かせて呼吸仕事量を軽減するよ。
急性呼吸不全や低酸素血症の改善、快適性の高さから急性期〜緩和ケアまで幅広く使用されるんだ。

酸素療法って種類がいっぱいだね…!
まだ見たことがないのもあるよ。
酸素療法管理中の観察ポイント

酸素療法はSpO₂の値だけでなく、
動脈血ガス分析と組み合わせて評価しよう!
動脈血ガス分析(ABG)でPaO₂、PaCO₂、pHを確認すると、酸素が足りているか、二酸化炭素がたまっていないかが分かるんだ。酸素は“最小限で効果を出す”のが基本だから、FiO₂は必要な範囲で維持しよう。
血液ガス分析の詳しい解説はこちら👈
呼吸・全身状態の観察
- 呼吸数やパターン(努力呼吸、陥没呼吸など)
- 呼吸困難感、チアノーゼ、発汗の有無
- 安静時と体動時でのSpO₂変化
- 意識レベル(傾眠、興奮、混乱など)
- 循環状態(脈拍、血圧、末梢冷感)
- 喀痰の量・性状・排出しやすさ
これらは酸素の効き具合だけじゃなく、状態の悪化や急変のサインにもつながる大事な観察項目だよ。患者さんの症状と検査結果を組み合わせて、効果を評価していこう。
もし改善が見られなかったり悪化している場合は、FiO₂や流量、デバイスの見直しが必要だから、すぐ医師に報告しよう。
合併症・副作用の早期発見
- CO₂ナルコーシス
:特にCOPDなどⅡ型呼吸不全の患者さんに多いよ。頭痛、傾眠、痙攣、発汗、意識障害がサイン。
血ガスで高PaCO₂+呼吸性アシドーシスを確認。 - 酸素中毒
:高濃度酸素を長時間吸入したときに起こる気道や肺の障害。PaO₂ 60〜70 Torr(SpO₂ 90〜93%)を目安にFiO₂を下げるように管理する。 - 再呼吸
:低流量マスクでのCO₂の滞留。流量不足やマスク密着不良が原因になる。 - 皮膚・粘膜トラブル
:鼻翼や耳介、頬骨の発赤やびらん、鼻内乾燥に注意。保護材や加湿を検討する。
デバイス別管理ポイント
各デバイスによっても気を付けるポイントが違うよ。デバイスの特徴を理解し、適切な流量と装着ができているか気を付けよう。
- 鼻カニューラ
:鼻翼や耳介の圧迫部位に発赤やびらんがないか観察しよう。鼻腔内の乾燥や痂皮形成を防ぐために、必要に応じて加湿や鼻腔ケアも行うよ。口呼吸が多い場合は、効果的に投与できない可能性があるから、デバイスの変更を検討しよう。 - 簡易マスク
:マスクの密着度を確認し、皮膚損傷を予防するために、頬骨部や耳介周囲を保護材でカバー。会話・飲食などで外した後は必ず再装着し、再装着忘れに注意しよう。 - 開放型マスク
:吸引がしやすいという利点を活かし、喀痰が多い場合に迅速な吸引ができるよう準備する。装着位置がずれていないか、FiO₂低下の原因にならないかを確認。 - リザーバーマスク
:バッグ内の酸素がしぼみ過ぎていないかを観察する。バッグの膨らみが不十分な場合は流路や接続部の異常をチェックしよう。 - ベンチュリーマスク
:アダプター色と設定濃度が指示通りか確認。アダプターや接続部の外れ・緩みがないかを観察し、患者の呼吸状態に合わせた濃度調整の必要性を報告する。 - ネーザルハイフロー(NHF)
:加温加湿器の水量・温度を確認し、鼻カニューラ先端の位置ずれやリーク(呼気漏れ)がないかを観察。チューブが引っ掛からないよう環境整備も必要だよ。
鼻周囲の皮膚や粘膜の乾燥・びらんなど皮膚トラブルにも気を付けよう。

患者さんの様子に、SpO₂、血ガス結果、合併症の予兆まで…
観察すべきポイントはいっぱいあったんだ…!
酸素療法管理中の患者の看護

看護師に身近な酸素療法。
しっかりとポイントを抑えて適切な治療を提供しよう!
投与の目的と指示内容の確認
酸素療法を安全に、より効果的に行うために、開始するときは必ず目的と医師の指示を確認しよう。
- デバイスの種類・酸素流量・FiO₂を確認
- 酸素療法の目的(低酸素改善、呼吸負担軽減、予防的使用など)を把握する
- 医師の指示通りの設定・流量になっているか確認する。指示に応じて酸素投与量やデバイスなども変更する。
- 延長チューブなどを使用する際は、接続不良がないかチェックする
- 状態によってはNPPVなど人工呼吸器管理に移行することも予測しながら観察や報告をする
安全管理
酸素を正しく使用しないと事故につながることもあるんだ…!看護師はもちろん、HOTを導入している患者さん・家族への指導も「安全」という視点を忘れないようにしよう。
- 火気厳禁(喫煙禁止、ガスコンロ・暖房器具の使用禁止)
- 流量計・加湿器・配管の接続を確認する
- 酸素流量は基本的に医師の指示に従い変更する
- 移動・離床時も酸素が使用できるよう、酸素ボンベや配管などを調整する
患者教育
在宅酸素療法が導入される患者さんへは、日常生活の注意点を指導しよう。患者さんに合わせて、無理なく続けられる生活作りを目指していこう!
- 会話や食事のしづらさを事前に説明し、不安の軽減に務める
- チューブの引っ掛けや転倒を防ぐために、自宅の導線やADLに応じた指導を行う。
- 外出・移動時の酸素機器の扱い方を説明し、トラブル時の対処方法についても指導する。
- トラブル時の連絡先を明確にしておく。
- 呼吸困難感、SpO₂低下、頭痛や眠気(CO₂貯留のサイン)の対応を周知し、異常があれば受診するよう伝える。

酸素療法を振り返ってみるよ!
「酸素療法」解説記事のまとめ
- 酸素療法は医師の指示のもと、開始基準の目安(PaO₂ < 60 mmHg、SpO₂ < 90%)や目標値に合わせて実施する
- 低流量と高流量の2つの方式があり、デバイスや患者さんの呼吸の仕方によってFiO₂や適応が異なる
- SpO₂だけでなく血液ガスと全身状態を組み合わせて効果と安全性を評価する
- 目的・設定・安全を確認し、デバイスごとの管理と患者教育を行う

マスクの選び方一つにも理由があったんだね。
詳しく知れたから、今までよりしっかり観察できそう!


