
非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)


NPPVって、挿管せずに呼吸管理ができるから、
患者さんの負担が少なくていいですよね。

そうそう。気管挿管や気管切開の必要がないから、
近年では第一選択とされるケースも増えてきたんだ。

それなら、みんなNPPVにしたらいいのに!
って思うけどダメですか?

患者さんへの負担を減らすのは大切だけど、明確な適応もあるんだよ。酸素療法や、IPPVと区別できるようにしていこう!
解説記事で学べること!
非侵襲的陽圧換気療法の適応

非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)は、気管挿管や気管切開をせずに、マスクや鼻カニューレを使って換気を補助する方法!
NPPVの適応となる病態
非侵襲的陽圧換気は、呼吸の苦しさを軽減させたり、ガス交換を助けたりする目的で導入されるんだ。
代表的なのは次のようなケースだよ。
- COPDの急性増悪
- 心原性肺水腫
- 免疫不全患者の急性呼吸不全
- 拘束性換気障害(肺結核の後遺症、脊椎後側弯症など)
- 神経筋疾患による呼吸筋の弱り
- 侵襲的人工呼吸からの離脱サポート
- 慢性呼吸不全で二酸化炭素(CO₂)がたまり、頭痛・傾眠・呼吸困難が出ているとき
- 気管内挿管を希望しない患者での治療上限や代替手段
NPPVが使えないケース
一方で、NPPVの対応ができないケースもあるんだ。無理に使うことで、呼吸苦を増強させたり、症状が悪化するケースもあるよ。
- 患者の協力が得られない(マスクを外してしまう、不穏など)
- 喀痰が出せない、分泌物が多い
- 誤嚥がある
- ドレナージされていない気胸がある
- 顔面損傷がある
- 気道に何らかの問題がある
NPPVは圧を加えて、換気量を上げる方法。だから、痰が詰まってしまったり、気胸が悪化してしまったりする可能性もあるんだ。NPPVが適さなければ、酸素療法やIPPVの導入を検討しよう。
酸素療法からのステップアップ
ネーザルハイフロー(NHF)(※酸素療法の一つ)を使用している患者さんでも、次のような所見が見られたら、NPPVへのステップアップを検討しよう。
- NHFでも酸素化が改善しない
- pH<7.30の呼吸性アシドーシスが進む
- 呼吸困難・頻呼吸が続いている
- FiO₂ 60%以上を必要とする

NPPVは酸素療法とIPPVの中間に位置するってことだね!
酸素療法の解説はこちら👈
非侵襲的陽圧換気療法の種類と特徴

NPPVのポイントは「人工呼吸器のモード」と「マスクの選択」!
人工呼吸器のモード
NPPVでよく使われるモードは、まずはCPAP(単相性)とBiPAP(二相性)の大きく2つに分けられるよ!
| 設定する項目 | 効果 | 注意点 | |
| CPAP | ・EPAP(PEEP) | 肺胞の虚脱を防ぐ、呼吸仕事量を減らす、心臓の負荷を軽減 | 換気量は増えないので、CO₂貯留の改善はできない |
| BiPAP | ・IPAP(吸気圧) ・EPAP(呼気圧) | PS(IPAP−EPAP)で換気量を増やし、PaCO₂を下げる | 設定が不十分だと効果が乏しい。 IPAPは10cmH₂O以上が望ましいことが多い |

BiPAPはさらに細かくモード分けができるんだ。
機器によっても名称が違うこともあるから、よく見るものを載せておくね。
| モード | 設定する項目 | 効果 | 注意点 | |
| 自発依存 | S (Spontaneous) | ・IPAP ・EPAP | 自発呼吸があるときだけサポート | 無呼吸になると換気できない |
| PS (Pressure Support) | ・IPAP ・EPAP | 吸気時に圧をかけ、努力を軽減、換気量↑ | 圧が低いと効果が出ない | |
| バックアップあり(自発が弱い/ 途絶える人向け) | T (Timed) | ・IPAP ・EPAP ・呼吸回数 | 設定した回数で機械が強制換気 | 自発呼吸とずれると苦痛になる |
| S/T Spontaneous/Timed) | ・IPAP ・EPAP ・呼吸回数 | 基本は自発呼吸に同期、無呼吸時は時間トリガー | 患者との同期ズレに注意 | |
| 強制換気 | PC (Pressure Control) | ・IPAP ・EPAP ・吸気時間 | 吸気時間を固定して一定換気 | 吸気時間が合わないと違和感が強い |
| 自動調整 | iVAPS/VAPS | ・目標換気量 ・EPAP | 換気量を保証するようIPAPを自動調整 | リークに弱く、精度の高い管理が必要 |
CPAPはPEEPをかけて肺を広げるモード、BiPAPはさらに換気量を増やすモード。
何をきっかけに換気を始めるか・どんな仕組みで換気量を保つかが細かい違いだよ。

なるほど!
まずは2種類に分けて、そこから細かく区別していけばいいのか。

その通り!次はマスクの種類を紹介するよ!
マスク(インターフェイス)の種類
| タイプ | 形状 | 特徴・用途 | 注意点 |
| 鼻タイプ | ・鼻マスク(鼻全体を覆う) ・ネーザルピローマスク(鼻孔を覆う) | ・慢性期に多く使用 ・話しやすく食事も一部可能 | ・口呼吸だと効果が落ちる ・鼻閉や鼻炎があると不向き |
| 鼻口タイプ (最も一般的) | ・フルフェイスマスク(Over-the-nose:鼻と口を覆う) ・Under-the-noseタイプ(ネーザルピロー+口マスクなど) | ・急性期・慢性期ともに汎用 ・口呼吸でも対応できる | ・圧迫で皮膚トラブルが起こりやすい ・装着感の不快さに注意 |
| 顔タイプ | ・トータルフェイスマスク(顔全体を覆う) ・ヘルメットタイプ | ・急性期に使用 ・高い圧でも比較的耐えやすい | ・装着が大がかりでケア困難 ・会話や口腔ケアが制限されやすい |
マスク選択はNPPVにおいてとても重要なんだ。
- 圧迫による皮膚障害
- リーク(空気もれ)
- 不快感や装着困難
患者さんに合ったマスクを丁寧にフィッティングすることが、治療にも大きな影響を与えるよ。
非侵襲的陽圧換気療法管理中の観察ポイント

身体のサイン・機械とフィッティング・合併症の兆候を観察しよう!
身体的観察ポイント
NPPV導入直後は特に状態が不安定になりやすい。ABCDEバンドルなどを用いながら、患者さんの全身状態を丁寧に見ていこう。
- 呼吸状態と循環動態:呼吸のしやすさ、呼吸数、血圧や心拍の変動を観察する
- 自覚症状:呼吸困難感、息苦しさ、不安、痛みを確認。数値化スケールを用いて評価する
- バイタルサイン:呼吸数、SpO₂、心拍数、血圧を継続的にモニタリング
- 呼吸様式:呼吸補助筋の使用、胸郭の動き、チアノーゼの有無
- 意識レベル:傾眠、不穏、せん妄などがないかチェック
- 血液ガス分析:PaO₂やPaCO₂の改善を繰り返し確認する
- 排痰の状況:マスク装着で痰が出にくくなるため、痰の量や性状を確認し、詰まりや誤嚥のリスクを評価する
血液ガス分析の解説はコチラもチェック👈
機械と装着のチェック
正常な作動と適切なフィッティングが重要。複数人でのチェックを行い、異常やトラブルのサインを見逃さないようにしよう!

合併症の観察
身体への侵襲性は低くても、合併症のリスクはあるんだ。対策を実施し、予防しよう。
- マスク関連:鼻や頬の発赤、びらん、潰瘍(MDRPU)。保護材で予防も可能
- 消化器症状:空気嚥下による腹部膨満、嘔気、嘔吐。誤嚥性肺炎に注意
- 眼の乾燥・刺激:リークが目に当たり乾燥や結膜炎を起こすことがある
- 陽圧換気による影響:低血圧や気胸(圧外傷)に注意。胸痛・呼吸状態悪化に警戒
- 精神的苦痛:閉塞感や不快感で不安、不穏、せん妄が生じやすい。筆談やジェスチャーでのコミュニケーションが有効
非侵襲的陽圧換気療法管理中の患者の看護

身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛にも目を向けてケアしていこう!
圧迫感・不快感への対応
NPPVは、マスクや陽圧の圧迫感が、さらなる苦痛となることがあるんだ。
- 苦痛や不安を訴えたときは、休憩やフィッティングの調整を行う
- 患者さんの呼吸状態や体格に合わせたマスクを選択する
- 状態が安定していれば、患者さんの希望に応じて一時的にマスクを外すことも可能
- NPPV装着中のケアは、負担を最小限にし、短時間で実施する
- 患者さんが苦痛を表出しやすい雰囲気や関係性を築く
マスク関連合併症の予防と管理
NPPV合併症の多くはマスクが原因となることが多いんだ。皮膚の赤み、びらん、潰瘍などを作らないよう、予防が大切だよ。
- マスクは「きつすぎず、緩すぎず」が原則。リークを心配しきつく締めすぎないよう注意
- リークの適性範囲である20~60L/分となるよう装着する
- 保護材の使用やフィッティングの工夫で皮膚障害を予防する
(厚みのある保護剤は、フィッティングに影響する恐れがある) - 皮膚トラブルを起こしてしまった場合は、呼吸状態を評価し、デバイスの変更を検討する
治療方針の検討
幅広く選択されるNPPVだけど、患者さんの希望に沿っているかな?適応の見極めだけでなく、患者さんの意思に基づいて治療方針を決めていこう。
- 急性期は酸素療法 → HFNC → NPPV → 挿管下人工呼吸の順に治療強度を上げる
- 改善があればNHFや酸素療法へのステップダウンも検討できる
- 呼吸管理の場面がACP(アドバンス・ケア・プランニング)の最初のきっかけになることも多い。数多くの選択肢の中から患者さんとご家族が納得して治療を決められるよう情報提供やサポートが必要

呼吸管理は「段階」があるんだね。
生命維持に直結する呼吸管理だからこそ、患者さんの意思決定を支える関わりが必要だね!

非侵襲的陽圧換気療法を振り返ってみるよ!
「非侵襲的陽圧換気療法」解説記事のまとめ
- NPPVとは、気管挿管や気管切開をせず、マスクや鼻カニューレで換気を補助する方法で、酸素療法と侵襲的換気の中間に位置する
- COPD増悪や心原性肺水腫などに有効だが、痰が出せない・誤嚥・気胸などでは不適応
- 酸素療法 → HFNC → NPPV → 挿管、と状態に応じてステップアップやステップダウンを検討
- 人工呼吸器のモードと、患者に合ったマスク選び・フィッティングが大切
- 身体的サイン、機械の作動、合併症の兆候をバランスよく観察し、苦痛の軽減や皮膚トラブルの予防を

NPPVは万能だと思っていたけれど、明確な適応があるんだね。侵襲が少なくても苦痛はあるから、少しでも安楽に過ごせるようケアしていこう!


