
心筋梗塞


同期の子が心筋梗塞のに患者さんを受け持ったみたい。私も急に受け持ち振られたらどうしよう…。
心筋梗塞って展開が早そうだし、ついていけるか不安だよー…。

心筋梗塞の患者さんの看護はスピード感もあって、ちょっと怖いイメージあるよね。でも、心筋梗塞がどういったものか分かれば、すべきことが見えてくる! 一つずつ理解していこう!
解説記事で学べること!
心筋梗塞の病態

心筋梗塞(MI)は、心臓に酸素を送る冠動脈が詰まり、心筋が酸素不足で壊死する病気!
冠動脈は本来、スムーズに心臓に血液を送りますが、動脈硬化が進むと血管内にコレステロールなどが沈着し、粥腫(じゅくしゅ)と呼ばれる塊ができるよ。
粥腫は脆く、破裂すると血栓が形成され、血管は閉塞し血液の流れが止まってしまうんだ。

酸素が届かなくなった心筋は20分程で壊死が始まり、元に戻ることはない...。
つまり、発症後の迅速な対応が予後に大きな影響を与える病気なんだ。
心筋梗塞の代表的な症状は「締め付けられるような持続する胸痛」。
身体所見に加え、心筋マーカー、心電図、画像検査、既往歴などの所見から総合的に診断されるよ。
心筋梗塞を含む心疾患は、日本の死因の第2位となっていて、命に関わることの多い疾患。
リスク因子として、高血圧、糖尿病、喫煙、脂質異常症、家族歴などがあり、予防には生活習慣の見直しが大切!
心筋梗塞と狭心症の違い

胸痛を主症状とする心筋梗塞と狭心症は、症状の持続時間と重症度に違いがある!
狭心症は一時的に血流が不足することで生じて、安静やニトログリセリンの投与で1~5分程で改善すると言われてるよ。
一方で、心筋梗塞は、血流の途絶えにより心筋が壊死するから、胸痛が長時間持続する。
またニトログリセリンへの反応も乏しいのが特徴なんだ!
そして、心筋梗塞ではトロポニンなどの心筋マーカーが血中で上昇するけど、狭心症では明らかな上昇は認められないこともあるよ。
心筋梗塞の症状
心筋梗塞を発症した方の多くが経験する症状が、胸痛や胸部不快感!
「火鉢で刺された」「えぐられる」と表現されることも多くて、持続する強い痛みが特徴。
また、痛みは胸部だけでなく、背部、下顎、左腕、右腕、肩などあらゆる部位に生じる(放散痛)ことがあるんだ!
胸痛以外にも以下の症状が現れることもあるよ。
- 経静脈怒張
- 血圧の変動
- 呼吸困難
- 意識喪失
- 発熱
- 不穏・不安感
- 悪心・嘔吐
- ショック兆候

このように心筋梗塞はさまざまな症状を呈するため、バイタルサインや全身状態のアセスメントが欠かせない!
一方で、急性心筋梗塞の約20%は無症候性と言われ、症状が全くないまたは、認識されない症状もあるみたい...。
特に、糖尿病が既往にある方は、胸部の不快感を「消化不良」と解釈する方もいるよ!
心筋梗塞の検査

心筋梗塞を鑑別するためには発症時の検査が重要な診断ポイントになる!
特に症状出現時に変化を示す検査もあるため、スムーズに検査ができるよう準備をしておこう。
心電図検査

胸部症状が出現してから10分以内に、12誘導心電図を記録しST上昇の有無を確認しよう。
ただし、STが上昇しているだけでは、必ずしも心筋梗塞であると判断できない!
心室ペーシングや脚ブロックがある場合には判断が難しい場合もあるから注意が必要だよ。
発症初期には変化が乏しいケースもあるため、前回の心電図と比較したり、経時的に観察したりする必要があるんだ。
心筋マーカーの測定
心筋トロポニンは心筋傷害が起きた際に反映される、重要なマーカーだよ。
わずかな心筋傷害も検出できるため、心筋梗塞の診断に欠かせない。
一度の測定で診断が難しい場合には時間をあけて再測定し、上昇や下降の変化を確認するのが重要。
ただし、心不全、腎不全、心筋炎、敗血症などの疾患でもトロポニンは上昇することがあるから、虚血以外の原因にも注意が必要!
CKやCK-MBなどの心筋マーカーも測定しますが、心筋梗塞の鑑別には主にトロポニンが用いられるよ。
画像検査
心エコーは壁運動異常の確認や心不全の重症度評価(Killip分類)、機械的合併症の有無(僧帽弁逆流、心室中隔穿孔など)を診るのに有効だよ。
特に、心筋梗塞と似た症状が生じやすい急性大動脈解離との鑑別に有効。
心エコーで心嚢液や大動脈径の観察を行い、CT検査で偽腔の確認などを行うことで、正確に診断を行おう。
胸部X線は心拡大や肺うっ血の有無を確認する基本的な検査で、胸部症状を訴える場合にも実施されるよ。
冠動脈造影検査(CAG)
冠動脈造影は、心筋梗塞の原因となる冠動脈の閉塞や狭窄、血栓の有無を直接確認する検査。
造影剤を使用し、冠動脈の血液の流れや狭窄・閉塞部位を確認するよ。
不整脈や造影剤による合併症が起こりやすく、検査中の全身状態の観察も重要!
CAGにより狭窄・閉塞部位が見つかった場合には、そのままカテーテル治療(PCI)に進むケースもあるから、今度一緒に深掘っていこうね!

心筋梗塞の治療

心筋梗塞の治療で優先されるのは、閉塞した冠動脈を再開通させ、心筋虚血を改善すること!
そのため、発症から治療までに、的確な診断と迅速な対応が求められるんだ。
再灌流療法(PCI)
心筋梗塞は、90分以内にカテーテル治療(経皮的冠動脈インターベンション:PCI)を行うことが推奨される!
これをPrimary PCIと呼び、心臓へのダメージを最小限に抑えるために有効だよ。
日本では心筋梗塞に対する標準的な治療方針となっていて、救急隊を含め、初期対応から迅速な対応がカギとなる!
PCI時には抗血栓薬(アスピリン、チエノピリジン系薬、未分画ヘパリン)を投与するから、出血傾向には十分な注意が必要だよ。
PCIがすぐできない場合は、血栓溶解療法(到着30分以内の投与を目標)も選択肢になるけど、血栓溶解療法が成功した場合でも、必要に応じてPCIが実施されることもあるよ。
緊急冠動脈バイパス術
通常はPCIが優先されるけど、PCIが不可能な病変やPCIに失敗した場合、もしくは合併症(血管の破れなど)が起きたときには緊急CABG(冠動脈バイパス術)が検討されるよ。
また、非ST上昇型心筋梗塞の患者でも、左主幹部病変など重症病変がある場合には、ハートチーム(心臓外科医や循環器内科医など)での相談の上、CABGが選ばれることもあるから、緊急だからこそチームで関わっていこう!
急性期薬物療法
心筋への負担を減らしたり、血栓を防いだり、合併症(不整脈・心不全)を防ぐために、以下の薬が使われることが多いよ。
- β遮断薬:心拍数を抑えて心臓の負担を軽減する
- ACE阻害薬:心不全の予防
- 硝酸薬、ニコランジル、Ca拮抗薬:血管を広げ、心臓への血流を改善する
- スタチン:血液中のLDLコレステロールを下げ、血管を保護する
- 抗血栓薬:PCIや血栓溶解療法に必須
- また、カルペリチド(ANP製剤)が併用されると、再灌流障害を減らす可能性があると報告されている。
状態に合わせて、複数の薬剤を併用するため、厳密な輸液管理が必要だから、患者さんの循環動態をみて医師と相談して薬物治療の方針を決めていこう。
補助循環
心筋梗塞で血行動態が不安定(心原性ショックなど)になった場合、補助循環装置を使って心臓をサポートする
主な装置には以下があるから、覚えておこう!
- IABP(大動脈内バルーンパンピング):心臓の負担を減らし、血流をサポートする
- IMPELLA:心臓内に小型ポンプを挿入して補助を行う
- VA-ECMO(経皮的心肺補助装置、PCPS):心肺機能を一時的に代替
- LVAD(左室補助循環装置):長期的に心臓をサポートする
重症例では、PCIと合わせてこれらの装置をすぐに使うケースも少なくない。
これらのME機器は操作一つが全身状態に大きく影響する。
そのため、しっかりと知識を身に付け、医師や臨床工学技士などを含めたチームで治療を進めていこう!
心筋梗塞の合併症

心筋梗塞を発症すると、心筋の壊死だけでなく、全身に影響が現れる。
心筋梗塞でよくみられる合併症には以下のものがあるから必ず覚えよう!
不整脈
心筋梗塞の急性期には、心臓のリズムが乱れる不整脈がよく見られるよ。
中でも心室性不整脈(心室細動:Vfや心室頻拍:VT)は命に関わるから、薬物療法や電気ショック(除細動:DC)などの処置を迅速に行う必要がある!
場合によっては埋め込み型除細動器(ICD)の適用が検討されることもあるから留意していこう。
心房細動(af)などの上室性不整脈では、アミオダロンやジゴキシンなどの薬剤を用いた心拍数のコントロールが必要なんだけど、一方で、脈が遅くなる徐脈性不整脈には、薬物治療やペースメーカーの埋め込みが必要になる場合もありえるよ。
心不全
心筋梗塞によって心臓のポンプ機能が低下すると、肺うっ血や急性肺水腫、低心拍出状態、心原性ショックなどにより心不全の状態となるから、薬物療法や呼吸管理など、厳密な全身管理が必要だよ!
心不全が重症の場合は、呼吸管理や薬物療法に加え、大動脈内バルーンパンピング(IABP)や経皮的心肺補助装置 (VA-ECMO)などの補助循環装置を使ってサポートすることがあるから、集中治療室との連携が必要だね!
機械的合併症
心筋梗塞で壊死した心筋が破れてしまうことで、命に関わる重大な合併症が起こることがある。
どれも、緊急手術や補助循環が必要な重篤な状態!
- 左室自由壁破裂:心臓の壁が破れてしまう。緊急の手術が必要。
- 心室中隔穿孔:心室の壁に穴が空いてしまう。
- 乳頭筋不全・断裂:弁を支える筋肉が壊れ、重い僧帽弁逆流を引き起こす。
急性腎不全
造影剤の使用や血行動態の悪化により、腎臓の機能が急に悪くなることがある(急性腎障害)から要注意!
特に、慢性腎臓病(CKD)がある患者さんではリスクが高まるよ。
あらかじめ腎機能をアセスメントしておき、造影剤を使用する場合には、造影剤の量を抑えることや、十分な輸液管理が大切で、必要に応じて血液浄化療法が行われることもある!
出血性合併症
心筋梗塞の治療では抗血栓薬を使うため、出血リスクが高まるよ!
特に高齢者や腎機能が悪い方は注意が必要...。
既往歴などを観察し、抗血栓薬の内服をしていなかったか確認すること!
意識レベルを含めたバイタルサインの変化や出血の有無など、こまめなチェックが重要だからモニタリングをしっかりしていこう!
心筋梗塞患者の看護

急性心筋梗塞の看護のポイントは、心筋壊死の進行防止と心筋梗塞による合併症の防止、不整脈の早期発見と対応!
早期の再灌流治療
心筋梗塞では、心筋へのダメージをできるだけ小さくするために、早期に血流を回復させることが大切。
特に心臓カテーテル治療(PCI)をすぐに実施できるよう準備をしておこう。
血液検査や心電図を実施し、前後の検査結果や既往歴も確認して置くことが大切だよ。
カテ室や他のコメディカルと連携し、情報の共有も大切。
夜間や休日に緊急PCIとなる場合を想定し、日頃からリーダーを中心に人員配置や役割分担ができるようシュミレーションしておこう。
観察とモニタリング
心筋梗塞が疑われるまたは、治療後の患者さんには、持続的に心電図モニターを装着しよう。
合併症の不整脈が起こりやすい状況だから、ささいな心電図変化も見逃さないようにすることが急変につなげないためのポイントだよ!
バイタルサイン(心拍、血圧、呼吸)はこまめにチェックして、患者さんの訴えも含め全身状態のアセスメント。
また、心不全のサイン(息苦しさ、ラ音、尿量の変化、体重増加など)にも注意し、呼吸状態や胸部レントゲン、血液ガスのデータも合わせて観察が必要だから、基本から見直していこう!
疼痛管理
胸の痛みを訴える患者さんには、必要に応じてモルヒネなどの鎮痛剤を使って痛みを和らげることもあるから、麻薬管理の方法も今度深掘っていこう!
痛みの場所・強さ・放散痛の有無・持続時間をしっかり聞き取り、疼痛緩和に努めるとともに、痛みや不安から不穏状態となる可能性もあるから、安静を守れるよう声かけや環境整備を行おう。
薬物療法の管理
急性期には、抗血小板薬、ACE阻害薬、β遮断薬などが使われる。
薬剤の作用・副作用(血圧低下や徐脈など)を理解し、異常があればすぐに報告しよう。
薬剤は微量投与するものもあり、輸液ポンプやシリンジポンプを使用するから、設定にミスがないか、適切に作動しているかを確認し、ダブルチェックも徹底していこう!
特に、 血圧によって投薬量を変更することもあるから、機器の操作をした際には確認してもらうよう習慣付けておくと安心だね。
本人・家族の精神的ケア
心筋梗塞の発症直後は、状況についていけず、患者さんやご家族が強く不安を感じる場面もある...。
患者さんの受け答えだけでなく、表情や態度にも注目しケアを行うことが何よりも大切で、看護師だから押さえておきたいポイントだね!
看護師がバタバタと忙しくしていると、患者さんや家族は声をかけるタイミングを見失ってしまうから、話しやすい雰囲気を作り、穏やかな話し方を心がけよう。
特に急なPCIや手術になると患者さんと家族の不安はいっそう大きくなるから、 医師の説明には同席して、理解の確認や情報の補足なども看護師の役割のひとつ!

心筋梗塞を振り返ってみるよ!
「心筋梗塞」解説記事のまとめ
- 冠動脈の閉塞により、心筋が酸素不足で壊死してしまう病気。
- 命に生命に関わる疾患でありで、発症直後は発症後の迅速な対応が求められる。
- 心筋梗塞の症状は「締め付けられるような持続する胸痛」がポイント。
- 診断には心電図や心筋マーカーなどの検査を実施する結果が重要。
- 閉塞した冠動脈を開通させ、心筋虚血を改善させることが優先されるため、スムーズに再還流療法(PCI)へ移する準備をすることが重要。
- 症状の観察はもちろん、患者さんと家族の精神面のケアがとても重要。

緊急性の高い治療や対応が求められるけど、
一つ一つできることを理解して、自信をもって受け持ちできるように頑張ろうね!


