
気道閉塞


食事介助をしていたら、患者さんがすごくむせちゃって焦ったんだ。もし詰まってたらって考えたら、すごく怖くなってきた…。そんなときって何をしたらいいんだろ?

喉に詰まって呼吸ができなくなる、いわゆる「気道閉塞」は、気づいたときの適切な対応が予後を左右するんだ。気道閉塞の病態や治療を理解して、やるべきことを確実にできるようにしておこう!
解説記事で学べること!
気道閉塞の病態

気道閉塞とは、空気の通り道である気道が何らかの原因でふさがれ、酸素が肺に届かなくなる状態。酸素が不足(低酸素血症)し、数分以内に意識消失・呼吸停止・心停止に至る可能性があるんだ、非常に緊急度の高い状態だよ。
特に「窒息」は年齢を問わず誰にでも起こる危険があり、緊急度のきわめて高い病態。気道閉塞によって脳が酸素を失うと、心肺蘇生が成功しても、
- 1年後に生存している人は10〜25%
- 社会復帰できる人は3〜10%
といわれていて、以前の生活に戻れる人はごくわずか。発見・対応の遅れはそのまま生命や予後に直結するよ。
気道閉塞が疑われた場合は、救命の基本である「ABCDEアプローチ」に従い、最優先でA(Airway:気道)を評価し、確保することが重要。
気道閉塞には、完全閉塞と不完全閉塞がある。
不完全閉塞は、ある程度空気が通っていて、咳などで異物が出る可能性があるよ。しかし、完全閉塞は、空気が全く通っておらず、すぐに処置が必要な状態。さらに、閉塞部位による原因の解明も大切なアプローチなんだ。
上気道閉塞
鼻~咽頭までの気道に閉塞が起こる原因には以下のものがあるよ。
- 血液
- 粘液
- 吐物
- 異物(食べ物・おもちゃ)※特に高齢者や小児に多い
- 声帯の痙攣
- 声帯の浮腫
- 咽頭・喉頭・気管の炎症(喉頭蓋炎やクループなど)
- 腫瘍(良性・悪性)
- 外傷
- アナフィラキシー(重度のアレルギー反応)
異物による気道閉塞は嚥下機能が低下している高齢者は特に起こりやすいよ。食事をきっかけに起こす方が多く、餅など飲み込みにくい食材は注意が必要。また、アルコール多飲状態では、吐物による閉塞が起こりやすいとされているよ。
下気道閉塞
気管支~肺までの気道に閉塞が起こる原因には以下のものがあるよ。
- 誤嚥(食べ物・唾液・吐物など)
- 気管支攣縮(喘息)
- 肺炎
- 肺水腫
- 肺出血
- 溺水
気道閉塞の症状

気道が閉塞すると、自ら症状を訴えられる状態ではないから、他者の観察が大切!
呼吸に関する症状
- 呼吸苦(呼吸が苦しい
- 咳嗽(せき)
- 狭窄音(気道が狭くなったときに出る音)
ストライダー(stridor):吸気・呼気どちらでも聞こえる、特に上気道閉塞で目立つ
ウィーズ(wheezes):アナフィラキシーなどで見られ、呼気時に強く長くなる(呼気延長) - シーソー呼吸(奇異呼吸):胸とお腹が逆方向に動くなど、通常とは異なる呼吸パターン
- 陥没呼吸:肋間、胸骨上部、鎖骨上部などが呼吸時にへこむ(呼吸補助筋の使用)
- 吸気性喘鳴:特に異物による閉塞の際に聞かれる
- 不規則な呼吸や微弱な喘ぎ呼吸:中枢神経障害や筋力低下のある患者で起こる
上気道閉塞では、吸気時の呼吸困難が目立ち、下気道閉塞では、呼気時の呼吸困難が目立つという特徴もあるよ。
全身症状・その他
- 興奮、錯乱、もがくような動き(神経機能が保たれている場合)
※「喉を手で押さえるしぐさ(universal choking sign)」が見られることも。 - チアノーゼ(口唇や爪先が青紫色に変色)
- 頻脈
- 発汗
- アナフィラキシーに特徴的な症状(全身の紅潮・じんましんなど)
異物が原因の場合、明らかな症状がないこともあるから、既往歴や症状出現前の行動にも注意が必要だね。
※チョークサイン
気道閉塞の検査

気道閉塞が疑われる場合には迷わず治療を開始するよ。適切な処置を行いながら、原因の解明に向けた検査を行うんだ。
血液検査
血液検査は、全身状態の把握や、炎症・感染の有無、酸素状態の評価に役立つ検査だよ。
血算・生化学検査を中心に、血球数や炎症反応などを確認するよ。特に、気道の浮腫・炎症の場合、白血球や炎症反応(CRP)が上昇を示す。炎症がある際には抗菌薬の使用を検討し、炎症を抑える治療を開始するよ。
ヘモグロビン(Hb)が低下していると、貧血傾向を示し、ガス交換がうまく行えない。その際には、原因となる貧血の治療も並行して行うよ。
また、血液がス分析は呼吸アセスメントにおいて重要な役割を果たすんだ。
- 酸素不足を調べるPaO2(動脈血酸素分圧)
- 呼吸機能の低下を調べるPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)
- 酸塩基バランスを調べるpH(酸塩基平衡)
これらの項目のチェックが欠かせない!
内視鏡検査
気道の内側を直接観察できる内視鏡検査は、診断に重要な検査。また、異物による気道閉塞の場合は、内視鏡を用いた異物除去も可能だよ。
内視鏡検査には、咽頭ファイバースコープや気管支ファイバースコープが用いられ、気道の狭窄・閉塞の位置や程度、異物、腫瘍、炎症の有無を観察するよ。
さらに、必要に応じて組織を採取し、生検をする場合もある。
画像検査
気道の狭窄や閉塞の部位・原因の把握、腫瘍の大きさや性状の確認などに有用だよ。
| 胸部X線 | ・気道狭窄、異物、腫瘍の有無を確認できる。・気管腫瘍では、空気の通りが悪くなっている部分(透亮像の低下)を認めることがある |
| CT | ・X線よりも詳細な画像で、狭窄・閉塞部位や異物、腫瘍の大きさ・位置を正確に把握できる。・急性・重症の気道異常にも有用 |
| MRI | ・軟部組織(腫瘍など)の評価に優れている。・検査に時間がかかるため、緊急時にはCTが優先される場合も。 |
画像検査を行うことで、閉塞・狭窄部位や、腫瘍の大きさなどを正確に確認できるんだ。
気道閉塞の治療

意識消失している場合には生命維持を優先し、心肺蘇生法(CPR)を開始するよ。さらに原因に合わせた治療が選択されるんだ。
気道異物の除去
異物が原因で気道が閉塞している場合、まずは速やかな除去を試みるよ。意識がある患者には、背部叩打法(背中を強く叩く)や腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)を用いて、異物を排出させる。ただし、高齢者や妊婦、小児に対しては体格や状態に応じて方法を調整しよう。
意識がない、または自力で排出できない場合には、喉頭ファイバースコープや鉗子(バスケット鉗子、スネアなど)を使って、内視鏡下で異物を摘出する処置が行われるよ。
薬物療法
気道閉塞が喘息やCOPDなどの呼吸器疾患に伴って起こる場合には、気管支拡張薬(β刺激薬や抗コリン薬)やステロイド薬が使用される。これらの薬は、気道の筋肉を緩めて空気の通り道を広げたり、炎症を抑えたりする働きがあるんだ。
また、感染症により気道が浮腫を起こして閉塞している場合には、抗菌薬の投与が検討されるよ。
アナフィラキシーが原因で気道閉塞が起きている場合には、アドレナリンの筋肉注射が第一選択となる。アドレナリンは、血管を収縮させ腫れを引かせ、気道を開かせる作用がある。必要に応じて抗ヒスタミン薬やステロイド薬も併用されるよ。
気管挿管
気道の閉塞が著しく、人工呼吸が必要な場合には、気管挿管を行って人工呼吸器での管理に移行するよ。通常は経口挿管が行われるけど、状況により経鼻挿管が選択される場合もあるんだ。
挿管処置中は、迷走神経反射によって一時的に脈が遅くなる(徐脈)ことがある。だから、救急カートの準備と、硫酸アトロピンなど必要な薬剤の備えが重要だね。
また、患者自身がチューブを抜いてしまう(自己抜管)などが起こると、呼吸状態が悪化したり、浮腫が悪化して再挿管が困難になることがある。挿管中の患者には鎮静剤を使用することが多いから、鎮静管理もとても重要なんだ。苦痛や興奮を和らげながら安全に管理を行う必要があるよ。
外科的気道確保
気管挿管やマスク換気が困難な場合には、外科的な方法で気道を確保する必要があるよ。
まず行われるのが輪状甲状靭帯穿刺で、喉元の靭帯に細いチューブを挿入し、短時間の換気を可能にする。ただし、チューブの口径が細く、十分な呼吸管理が難しいから、一時的な処置でしかないんだ。
そのため、輪状甲状靭帯穿刺に続いて、輪状甲状靭帯切開(気管切開)へ移行するのが一般的。
また、外科的気道確保は、顔面の重度外傷や喉頭の腫れ、出血などで通常の挿管ができない場合にも適応となるよ。
気管切開は、腫瘍などの治療に対しては、計画的に実施される場合もある。看護師は器材の準備や処置中のモニタリング、術後の管理を適切にサポートすることが重要だね。
気道閉塞の治療

気道閉塞は緊急度の高い状態で、迅速な対応が求められる。突然起こることではあるけど、前兆を感じたら動けるよう看護のポイントをおさえておこう!
気道内吸引
気道が塞がる原因は異物だけでなく、痰や血液であることも多い。
たとえば、肺炎を患っている患者さんや、慢性呼吸器疾患を持つ高齢者は、痰が絡みやすく十分な喀痰が行えないから、こまめな吸引が必要だよ。また、脱水があれば、痰の粘り気が増し、自力での喀出が難しくなる。こうした場合には、体位ドレナージなどを併用し、できる限り患者さんが楽に痰を出せるように支援しよう。
術後や検査後で出血が止まらない場合には、痰と混じって気道を塞ぐ可能性も…。吸引しても血液が続くようであれば、すぐに医師に報告し、対応を仰ぐことが大切だよ。
適切なポジショニング
呼吸困難を訴える患者さんには、気道閉塞を解放する体位の提供が大切。頭部後屈顎先挙上法や下顎挙上を行い、BVM換気や咽頭鏡での観察がしやすいよう体位を整えよう。
このとき、ベッド柵やヘッドボードを外し、患者の頭側に入り込めるように環境を整えることも必要。転落対策にベッドの高さが低くなっていることも多いから、医療者の腰くらいの高さまであげておくと良いよ。挿管をする場合には施行者の利き手側に救急カートを配置するなど、導線を考えながら配置をしよう。
酸素投与
呼吸状態が悪化している患者さんには、高濃度酸素の投与が必要になることがある。特に初期対応では、リザーバー付きマスクを使って10L/分以上で酸素を流すことが多いよ。呼吸が止まりそうな場合には、バッグバルブマスク(BVM)で補助換気を行うから、正しい使用方法を理解しておこう。
病態によっては、酸素を過剰に与えることでCO2ナルコーシスを起こす可能性もあるんだ。患者さんの呼吸状態だけでなく、基礎疾患(Ⅱ型呼吸不全の既往)や血液ガスの結果も確認し、循環や意識もよく観察しながら、適切な流量を選択しよう。
治療の準備
異物の除去や挿管、外科的気道確保など、緊急の治療が必要になるケースもあるよ。救急カートや、使用する可能性のある薬剤など、すぐに処置が行えるように準備しておこう。
また、同じ部署のスタッフだけでなく、オペ室や放射線科、他職種との連携も欠かせないね。迅速に対応できるよう、情報共有をしておこう。
全身状態のアセスメント
モニターを装着して、血圧・心拍数・酸素飽和度などを常に確認しよう。気道が閉塞すると、急激に状態が変化することがあるよ。バイタルサインが安定していても、油断せず全身状態の観察を継続しよう。
また、低酸素による不穏状態や錯乱が出ることもあるんだ。たとえば、「何か落ち着かない」「ソワソワしている」と感じたら、それは患者さんが苦しくなってきたサインかも。意識レベルや呼吸状態をもう一度チェックし、変化がないか観察しよう。
患者さんの安全確保も看護の重要な役割。転倒や自己抜管などのリスクが高まる場面では、必要に応じて環境整備や鎮静の工夫もしよう。

気道閉塞を振り返ってみるよ!
「気道閉塞」解説記事のまとめ
- 気道確保を第一優先に
- 食事中であれば、原因は異物である場合が多いが、腫瘍、むくみなどが原因の場合も考えられるため、既往や現病歴状況の確認も大切
- 呼吸苦や異常呼吸だけでなく、チアノーゼ、頻脈などの全身の状態を症状観察する
- 血液検査・内視鏡検査・画像検査と並行し、治療を開始する
- 意識がない場合には応援の要請をし、ただちに心肺蘇生を開始する
- 外科的処置も視野に、救急カートや薬剤の準備をする

食事介助一つでも、リスクを考えておかないといけないね。緊急度の高い状態だからこそ、焦らず落ち着いて対応できるようにしたいね!


