
消化管穿孔


消化管穿孔って、お腹の中が破れちゃうってことだよね?考えるだけでも痛そうー…!!!

患者さんの痛みに寄り添うことはすごく大切なことだよね。もう一歩、その痛みがおこったらお腹の中がどうなっているのかを想像してみよう。消化管穿孔は、すごく緊急性の高い状態なんだよ。消化管穿孔について学んでいこう!
解説記事で学べること!
消化管穿孔の病態

消化管穿孔は、胃や腸に穴が開き、腸の中の内容物が腹腔内に漏れ出してしまう状態のこと。
消化管には、食べかすや消化液、便、細菌などが含まれていて、本来は腸の中にとどまり、糞便として排出されるもの。それが腹腔に広がることで腹膜炎を起こし、放置すると敗血症や多臓器不全に進行する危険があるんだ。命に関わる緊急度の高い疾患だよ。
穿孔が起こる場所は、胃や十二指腸といった上部消化管から、小腸・大腸といった下部消化管まで、どこでも可能性がある。場所によって、炎症の強さや重症度に違いがあるよ。
たとえば、胃や十二指腸のような上部消化管の穿孔では、消化液などが漏れ出して腹膜炎を起こす。ただ、腸内細菌の量は比較的少ないから、保存的治療で改善することもある。
でも、小腸や大腸など下部消化管の穿孔では、漏れ出すのが便や多くの腸内細菌だから、腹膜炎が強く出やすい。便汁性腹膜炎といって、腹腔全体に炎症が広がるケースも少なくないんだ。進行が早く、合併症を引き起こしやすいから、すぐに対応が必要だよ。
消化管穿孔の原因
消化管穿孔は、さまざまな背景で腸管に穴が開いてしまう状態で、原因は大きく「内因性」と「外因性」に分けられるよ。
【内因性(体の内側に起因するもの)】
- 消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍など)
- 憩室炎(特に大腸憩室炎)
- 腸閉塞
- 炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)
- 中毒性巨大結腸症
- 急性胆のう炎が周囲に波及したケース
これらは、炎症や圧迫によって粘膜が傷つき、最終的に穿孔に至るんだ。
【外因性(体の外からの影響によるもの)】
- 腹部への強い外力(交通事故、転倒などの外傷)
- 内視鏡検査や手術中の偶発的な損傷
- 鋭利な異物の誤飲や、肛門からの異物挿入による損傷
患者さんの中でも、高齢者や基礎疾患のある人、ステロイドやNSAIDsを長期間使用している人は、粘膜がもろくなって穿孔リスクが高まっているから特に注意が必要だね。
消化管穿孔の症状
消化管穿孔では、突然の強い腹痛をはじめとして、さまざまな症状が現れるよ。

穿孔した場所によって痛みの部位にも違いがあるよ。たとえば、上部消化管の穿孔では上腹部に痛みが限局しやすく、下部消化管の穿孔では腹部全体や肛門の周囲に強い痛みが出ることもある。
これらの腹痛や腹膜刺激症状に加えて、次のような消化器・全身症状がみられることもあるよ。
- 嘔吐・悪心、食欲不振
→ 穿孔によって腸の動きが悪くなることで起きる。腸蠕動音の減弱や消失も重要なサイン! - 発熱、悪寒、倦怠感
→ 炎症や感染が広がってくると全身症状が出ることも。 - ショック兆候(意識障害、頻脈、低血圧など)
→ 細菌や毒素が血流に乗って全身に回ると、敗血症性ショックを起こすことも…
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消化管穿孔の検査

消化管穿孔が疑われる時は、画像検査で穿孔の有無を確認するよ。
腹部X線検査
最初に行われることが多いのが腹部X線検査(単純X線)だよ。
仰臥位や立位の腹部X線と、胸部X線を組み合わせて撮影することで、お腹の中にガス(free air)が漏れていないかを確認するんだ。
注目するポイントは、横隔膜の下にガスがたまっているかどうか。このガスは、穿孔により消化管の中の空気が腹腔内に漏れ出したサインだよ。
ただし、撮影するタイミングが早すぎると写らないこともあるよ。時間が経つにつれてガスの量が増えて、写る確率が高くなってくるんだ。
場合によっては、側面から撮影した方が遊離ガスが見つけやすいこともあるから、体位を変えて何枚も撮影することもあることを覚えておこう。
腹部CT検査
X線だけでは診断がつかない場合や、穿孔の場所を詳しく調べたい時には、腹部CTを撮影するよ。 CTでは、腹腔内のガスや腹水の量、穿孔している場所をより正確に把握することができるんだ。
CT検査では、より詳細に撮影するために、造影剤が使われることもあるよ。ただ、穿孔の疑いがある患者さんに対しての使用は注意。特に、バリウムは、腹腔内に漏れると化学性腹膜炎を引き起こしてしまうから絶対に使用禁止!その代わりに体内で吸収されやすく、化学性腹膜炎のリスクが低い、「水溶性の造影剤」が選択されるよ。
その他の検査
画像だけでなく、血液検査でもヒントが得られることがあるよ。特に、白血球数(WBC)やCRP(C反応性タンパク)といった炎症を示す数値は、穿孔で腹膜炎が起こっているときに高くなる傾向があるんだ。
ほかにも、急性期を過ぎた後や、消化性潰瘍の再発・悪性化のリスクを確認するために、上部消化管内視鏡が使われることもあるよ。ただし、穿孔が疑われる急性期は内視鏡検査は原則行わない。経過を見て必要な検査がオーダーされるよ。
消化管穿孔の治療

腸の中の内容物が腹腔内に漏れ出て、腹膜炎を引き起こした状態は、かなり緊急度が高い!治療開始が遅くなるほど死亡率も上がるんだ。
外科的治療(手術)
多くの場合は、外科的な治療(手術)が選択されるよ。
胃液や消化液、便などが腹腔内にこれ以上漏れ出さないように、潰瘍穿孔閉鎖術や腸切除術などの手術が行われるよ。さらに、腹腔内に漏れ出した汚染物をしっかり洗い流すために、腹腔洗浄やドレナージがされることもあるんだ。
特に次のようなケースでは、できるだけ早く手術に移ることが推奨されているよ。
- 穿孔からの時間が長く経過している
- 腹膜炎が上腹部だけでなく、広い範囲に広がっている
- 腹水が多くたまっている
- 胃や腸の中の内容物が大量に漏れている
- 70歳以上の高齢者
- 持病が多く、全身状態が不安定な場合
患者さんの状態によっては、腹腔鏡手術が選ばれることもあるよ。でも、これは設備やスタッフ体制が整っている施設で、全身状態が安定している場合だけ。基本的には緊急で手術が必要な状態と覚えておこう。
保存的治療
穿孔の穴が小さく、症状が軽くて、全身状態も安定している場合には、保存的治療になることもあるんだ。
保存的治療が適応になるのは、次のような条件がそろっているとき。
- 発症から24時間以内
- 空腹時に起きた穿孔(内容物が少ない)
- 腹膜炎が上腹部だけに限局している
- 腹水が少量で、全身状態が安定している
- 重い持病がない
この場合は、以下のような治療を組み合わせて経過をみていくよ。
- 絶飲食(腸を休ませる)
- 点滴での水分・電解質補給
- 抗菌薬の投与(腸内細菌への対策として広域抗菌薬を使用)
- PPIやH2ブロッカー(胃酸を抑えて粘膜を保護する)
- 経鼻胃管・腸管(イレウス管)の挿入(胃や腸の内容物や消化液、ガスなどを抜いて内圧を下げる)
改善がみられない場合には、すみやかに手術へ切り替える判断がされるから、いつでも手術ができるよう準備はしておこう。
抗菌薬治療
腹膜炎に対する抗菌薬治療では、腸内細菌(大腸菌やバクテロイデス属など)に有効な広域抗菌薬をできるだけ早く投与するよ。
よく選択される抗菌薬は以下のとおり。
- カルバペネム系(メロペネムやドリペネム)
- TAZ/PIPC(タゾバクタム・ピペラシリン)
最初は経験的に広くカバーできる薬を使い、培養結果が出たら必要に応じて薬を狭める「デ・エスカレーション」を行うのが基本だよ。治療期間は、感染源が適切にコントロールできている場合、軽症で3日間、中等症で4日間、重症でも原則7日以内が目安。
消化管穿孔の合併症
穿孔によって腹腔内に漏れ出した消化液や便は、強い炎症を引き起こして、全身にまで影響を与えるよ。消化管穿孔には注意すべき合併症がたくさんあるんだ。
腹膜炎
消化管穿孔とったらまず腹膜炎をイメージしてほしい。それくらい危険で、重要な合併症だよ。
穿孔によって、胃腸の中の内容物(便や消化液、腸内細菌)が腹腔内に漏れると、無菌だった腹腔内が汚染される。その結果、腹膜というお腹の内側を覆っている膜が炎症を起こし、急性腹膜炎となるんだ。
この炎症が全体に広がると、汎発性腹膜炎といって非常に重症な状態になる。激しい腹痛、発熱、嘔吐、お腹の筋肉がガチガチに硬くなる「板状硬(ばんじょうこう)」などの症状がみられるよ。特に下部消化管の穿孔では、便や細菌の量も多いため、腹膜炎が一気に広がりやすいんだ。
敗血症・DIC(播種性血管内凝固)
腹膜炎が進行して、細菌が血液の中に入り込むと、敗血症という全身感染症の状態になるよ。全身に炎症が起きて、臓器の機能がどんどん落ちてしまう多臓器不全に陥ってしまう。
さらに、敗血症が悪化するとDIC(播種性血管内凝固症候群)を引き起こすことがあるよ。これは、体のあちこちで血栓ができてしまう。その一方で、逆に出血もしやすくなるという、非常に危険な状態なんだ。
腹部膿瘍
穿孔による感染が腹腔内の一部にとどまった場合、腹部膿瘍ができることがあるよ。これは、膿が袋状にたまった状態で、熱が続いたり、局所に痛みや違和感が出ることがあるんだ。
膿瘍ができた場合は、抗菌薬だけでは治りにくく、外科的に排膿(ドレナージ)を行う必要があるから、新たに処置が必要になるよ。
内出血
穿孔したときに、近くの血管まで一緒に傷ついてしまうと、腹腔内に出血する(内出血)ことがあるよ。この場合、出血量が多いとショックになったり、貧血の症状が出たりするんだ。血圧低下・頻脈・顔色不良などショック症状がでた場合には、ショックに対する対応が必要だよ。
腸管壊死
穿孔が長時間放置されると、腸の一部に血液が届かなくなって壊死してしまうことがある。壊死した腸は元に戻らないから、その部分を切除する手術が必要になるんだ。
腸閉塞や縫合不全
穿孔に対して手術をしたあとは、創部の感染や傷の治りが悪くなること(治癒不全)にも注意が必要だよ。
特に高齢の患者さんや、糖尿病・免疫力が落ちている人は、リスクが高くなるから、より注意していこう。
消化管穿孔患者の看護

消化管穿孔に必要な看護のポイントをおさえておこう!
緊急手術へ向けた初期対応
消化管穿孔では、診断がついたらすぐに手術になるケースがほとんど。そのため、術前にできることは限られているんだ。短時間のうちに、以下のような初期対応をすばやく進めることが求められるよ。
- 酸素投与やルート確保で循環・呼吸を安定させる
- 経鼻胃管を挿入し、胃内容物を減圧することで腹腔内の圧を軽減する
- 尿道カテーテルを挿入し、尿量をモニタリングして循環状態を評価する
- 検査室・手術室と連携を取り、スムーズに手術へ移行できるよう準備する
- 患者さんや家族が、状況に取り残されないよう、理解の確認や不安に寄り添った声かけを
ドレーン・創部の観察と感染対策
手術後は、再穿孔や感染の兆候を見逃さないように、全身と局所の観察が重要だよ。
- 排液量や性状(膿性・血性・便性など)を毎回確認・記録する
- 創部の発赤、腫脹、熱感などを丁寧にチェックする
- ドレーンや経鼻胃管の挿入部の固定や清潔保持にも気を配る
- 抗菌薬の投与スケジュールを確認し、指示通りに投与する
- 清潔ケアや環境整備を徹底し、感染リスクを最小限にする
急変への備え
消化管穿孔は、術後も油断できない疾患。とくに腹膜炎から敗血症、DICなど重篤な合併症に発展することもあるから、こまめな観察がカギになるよ。
- 腹痛の部位や性状、腹膜刺激症状の有無を確認する
- 腸蠕動音の減弱や消失に注意
- バイタルサイン(血圧、脈拍、体温)、尿量、意識レベルの変化を見逃さない
- 熱型や倦怠感の訴えから全身状態の悪化を早期に察知する
精神面のサポート
突然の激しい痛み、診断、そして緊急手術など、患者さんやご家族は、不安と混乱でいっぱいだよ。
- 医師からの病状説明には同席し、内容を繰り返したり、わかりやすく言い換えたりして、理解をサポートする
- 「何か聞き逃してませんか?」と一言添えるだけでも、安心感につながる
- 手術後も不安や痛みが続く場合があるから、こまめに声かけをして気持ちを確認する

消化管穿孔を振り返ってみるよ!
「消化管穿孔」解説記事のまとめ
- 消化管穿孔とは、胃や腸の穴が空き、腸内の内容物が腹腔に漏れ出して腹膜炎を引き起こす状態
- 症状は、突然の激しい腹痛、腹膜刺激症状(筋性防御・反跳痛)、発熱、悪心・嘔吐、ショック症状(血圧低下・意識障害)など
- 腹部X線やCTでfree air(腹腔内遊離ガス)や腹水が認められる
- 治療は、緊急手術で穿孔部の縫合・切除、腹腔洗浄・ドレナージが中心

便や細菌が漏れ出てしまうってことは、お腹の中が汚れてしまうってことだもんね。観察を徹底して、重症化する前に対応する重要性が理解できました!


