
急性腎障害


昨日受け持った患者さん、すごく元気だったのに、腎不全が進んでたみたいで…。何か気付けたことはなかったのかな…。

急性腎障害は目立った症状が出にくいから難しいけど、一番身近な看護師だからこそ、小さなサインに気が付けるといいよね。今日は急性腎障害の理解を一緒に深めていこう!
解説記事で学べること!
急性腎障害の病態

急性腎障害(AKI)は、数日から数週間で腎臓の働きが急激に低下する状態のことだよ。
老廃物がうまく出せなくなって、水分や電解質のバランスが崩れてしまうんだ。特に、高齢者や糖尿病、慢性腎臓病(CKD)のある方がなりやすくて、造影剤を使う検査や手術のあとにも起きやすいんだ。
急性腎障害は、ほかの病気と関連して起こることが多くて、いったん起きると予後を悪くするんだよね。だから、「原因を早く見つけること」「治せる原因があれば、すぐに取り除くこと」が重要だよ。
急性腎障害は、原因によって3つのタイプに分けられるよ。
腎前性(血流が足りない)
腎臓に流れる血液が少なくなって、腎機能が一時的に落ちるタイプ。
- 脱水(嘔吐・下痢・飲水不足)
- 出血
- 心不全
- 低血圧
高齢者は、血管が硬くなっていたり、体液が少なくなりがちだから要注意!
腎性(腎臓そのものが傷つく)
腎臓の組織が直接ダメージを受けてしまうタイプ。
- 急性尿細管壊死(最も多い)
- 急性糸球体腎炎
- 間質性腎炎
- 腎毒性物質(造影剤・抗がん剤など)
腎臓の糸球体・尿細管・間質など、さまざまな部位に障害が起きるんだ。
腎後性(尿が出ていかない)
尿の出口がふさがって、腎臓に尿がたまってしまうタイプ。
- 前立腺肥大
- 尿路結石
- 腫瘍による閉塞

心不全や敗血症のある患者さんでは、腎臓の血流が低下したり多臓器不全が進んだりして、急性腎障害を起こしやすくなるから注意しよう!
乏尿性と非乏尿性AKI
急性腎障害には「尿が少なくなるタイプ」と「尿は出ているけど腎機能が落ちているタイプ」があるよ。
- 乏尿性AKI:尿量が1日400mL未満など、明らかに少ない
- 非乏尿性AKI:見た目は普通に尿が出ているけど、腎機能は落ちている
乏尿性の方が経過が重くなりやすい。だから、尿量チェックはとっても重要なんだ。
急性腎障害の診断基準(KDIGO)
急性腎障害は、次のいずれかに当てはまると診断されるよ。尿量や水分出納、検査値の変化に注目することが重要!
| 判定基準 | 内容 |
| クレアチニンの変化(急性) | 48時間以内に 0.3mg/dL以上 増加 |
| クレアチニンの変化(経時) | 7日以内に 1.5倍以上 に上昇 |
| 尿量 | 6時間以上、0.5mL/kg/時未満 |
急性腎障害の症状

急性腎障害の初期は、はっきりした症状が出にくい特徴があるよ。
体重がちょっと増えたり、足がむくんだり…。急性腎障害はそこから始まることもあるんだ。それに、急性腎障害は手術後や感染症、敗血症などの合併症として起こることが多いから、もともとの病気の影に隠れて、症状が目立たないことも多いよ。
でも、腎機能が悪化して老廃物(窒素化合物など)がたまってくると、「尿毒症」と呼ばれる危険な症状が出てくるんだ。
尿毒症で見られる症状は以下のものがあるよ。
- 食欲がなくなる
- 吐き気、嘔吐
- だるさ、筋力低下
- 手足のぴくつき(ミオクローヌス)、けいれん発作
- 意識がもうろうとする、錯乱、昏睡
- 羽ばたくような手のふるえ(羽ばたき振戦)
- 反射が強くなる(反射亢進)
さらに進むと…
- 胸の痛み(心膜炎による)
- 聴診でこすれるような音(心膜摩擦音)
- 肺に水がたまって呼吸が苦しくなる(肺水腫)

尿毒素が体に溜まってきたサインだね…。見逃さないようにしなきゃ!
尿量の経過で見る急性腎障害のサイン
急性腎障害では、腎障害の進行にあわせて尿量が変化することがあるよ。これは、急性腎障害のサインなんだ。
① 前駆期(まだ尿が出ている)
- 血圧が下がっていたり、造影剤などが使われたりして、腎臓にストレスがかかっている状態
- この時期は、尿量が正常なことも多いから見逃しやすい
② 乏尿期(1日の尿量が50〜500mL程度)
- 明らかに尿が少なくなってくる
- 期間や程度は人によって違う。乏尿が出ないタイプ(非乏尿性AKI)もある
③ 回復期(尿は出てきたけど…)
- 尿量が増えても、腎臓の機能はまだ完全に戻っていない
- ナトリウムを失いやすく、尿が出すぎて脱水になることも…
- 高クロール性代謝性アシドーシスなどの電解質異常にも注意が必要

体重の微増や尿量の変化、意識レベルの変化に注意しよう。
急性腎障害の検査

急性腎障害の診断にはどんな検査が必要なの?

急性腎障害は、早期に腎障害を見つけて、重症度や、原因を調べることがとっても重要。そのために、血液検査・尿検査・画像検査などを組み合わせて評価をするんだ。
KDIGO診断基準に必要な検査
「KDIGO基準」に沿って、血清クレアチニンと尿量に関する検査が行われるよ。
- クレアチニン(sCr)※正常値⇒男性0.6~1.1mg/dl、女性0.4~0.8mg/dl
:腎機能が低下すると上昇 - 尿素窒素(BUN)※正常値8~20mg/dl
:sCrとセットで評価 - BUN/Cr比:脱水などの腎前性AKIで上昇しやすい(>20)
- 尿量:6時間で0.5mL/kg/時未満なら要注意(重症度の目安にもなる)
バイオマーカー検査
血液や尿の中にある「バイオマーカー」を使って、腎障害の早期発見をサポートする検査もあるんだ。クレアチニンや尿量だけでは急性腎障害の判断ができないときや、鑑別(腎前性・腎性)や重症度の判断が難しいときに行われるよ。
- 尿中NGAL(ネウトロフィルゼラチナーゼ結合リポカリン)
:腎性AKIで特に上がりやすく、腎前性との鑑別に使われることも - L-FABP(脂肪酸結合タンパク):尿中に出るバイオマーカー
- 血清シスタチンC:クレアチニンよりも早期に上昇する可能性あり
原因を調べるための検査

「腎前性・腎性・腎後性」を分類するために、検査を組み合わせて、原因を調べていくよ。
腎前性(血流が足りないタイプ)
- 尿中ナトリウム(Na)やFENa(排泄分画)
⇒腎前性ではナトリウムをできるだけ再吸収するからFENaは低値になる傾向 - BUN/Cr比が高い(>20)と、腎前性の可能性が高い
- 尿比重・尿浸透圧が高くなる(濃い尿)こともある。
腎性(腎臓そのものが障害されているタイプ)
- 尿沈渣(赤血球円柱、白血球、上皮細胞など)
- 尿比重・尿浸透圧が低い(薄い尿)→腎がうまく濃縮できていないサイン
- 血清学的検査(抗核抗体、補体など)→糸球体腎炎や膠原病が疑われるときに使う
腎後性(尿の通り道がつまっているタイプ)
- 腎エコー(超音波検査):水腎症や尿路の閉塞を確認できる
- CT検査:結石や腫瘍などの詳細な評価に使うこともある
急性腎障害の治療

急性腎障害の治療は原因の除去と全身管理がポイントだよ。必要に応じて血液浄化療法も行われるんだ。
まずは、腎障害を引き起こしている原因を見極めて、取り除いていくよ。
- 脱水や低血圧が原因→補液で腎血流を回復させる
- 尿路閉塞→早めにカテーテルや処置で解除する
- 腎炎や血管炎が疑われるとき→ステロイドや血漿交換なども検討される
加えて、水分出納の調整がとても重要!
- 初期は脱水を補うために輸液を積極的に行う
- 進行すると体液過剰になりやすく、利尿薬での調整や水分制限が必要になることもある
薬物療法
急性腎障害の薬物治療は、原因治療が優先。でも、薬の使い方には注意しなければいけないんだ。
ループ利尿薬は、体液過剰を補正する目的で使用されることがある。でも、急性腎障害を予防したり回復させたりする目的の使用は推奨されていないんだ。
また、以下の薬剤は有効性が十分に証明されていないから、現在はルーチンでは使わないよ。
- 低用量ドーパミン
- 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
薬物療法で大事なのが、腎臓で排泄される薬剤の投与量調整なんだ。抗菌薬(バンコマイシン、アミノグリコシド系など)やNSAIDsなどは、体にたまりやすく、副作用や中毒症状が出る恐れがあるんだ。だから、処方内容の調整や薬物血中濃度の確認が重要だよ。
血液浄化療法(RRT)
腎機能が回復するまで、腎臓の代わりに老廃物や余分な水分・電解質を取り除く治療が血液浄化療法(RRT)だよ。
- 高カリウム血症(不整脈のリスク)
- 利尿薬が効かないほどの溢水(肺水腫など)
- 重度の代謝性アシドーシス
- 尿毒症による意識障害や心膜炎
こういった原因がある場合に、血液浄化療法の導入が検討されるんだ。
血液浄化療法には、以下の2つの種類があるよ。
- CRRT(持続的血液濾過):血圧が不安定な患者に向いている
- IRRT(間欠的透析):循環が安定していれば選択可能
透析中は、血圧が下がることもあるから、呼吸状態や循環動態のモニタリングは必須!
透析を終了するタイミングは
- 尿量が戻ってきた
- 電解質や代謝状態が安定してきた
つまり、尿量や電解質・代謝状態の変化の観察が大切ということ。安定してくれば、透析の中止も検討されるよ。

でも、高齢者には透析導入は難しいよね?

年齢ではなく、その人の元の生活(ADL)や、これからの回復の可能性を考えて透析は導入されるんだ。「高齢だから透析はしない」という判断は避けるべきだよ。
栄養管理(回復期や重症例でのサポート)
腎機能が悪くなると、栄養状態も不安定になりやすいんだ。ただ、必要以上の制限は、体力低下を引き起こし、回復を遅らせてしまう…。
だから、重症で経口摂取ができない場合でも、可能であれば経腸栄養を行うのが基本なんだ。エネルギーやタンパク質のコントロールは、患者さんの回復に欠かせないものだよ。

看護師だけでなく、医師・栄養士・薬剤師にも相談して、栄養サポートをしていかないとね!
急性腎障害の合併症

急性腎障害の原因の治療をして、腎機能が改善すれば、もう元気に退院できますよね!

急性腎障害は、治療そのものにリスクがあるもの。さらに、回復後も合併症に注意は必要だよ。
治療に伴う医原性合併症
まずは治療中に起こる合併症をチェックしていこう!
血液浄化療法(RRT)に関連するもの
- カテーテル挿入による出血・気胸・動脈誤穿刺
- 抗凝固薬による出血傾向
- CRRT(持続的腎代替療法)中の低カリウム血症・低リン血症
- 透析時の循環動態の変動(血圧低下、意識レベルの低下など)
使用薬剤による副作用
- ループ利尿薬(フロセミドなど):高容量では耳鳴り、難聴のリスクがある
- 低用量ドーパミン:頻脈、心筋虚血、免疫抑制など
- ナファモスタット(抗凝固薬):アナフィラキシー、高カリウム血症、白血球減少など
電解質・酸塩基バランスの異常
- 高カリウム血症・低カリウム血症:心電図変化や不整脈の原因になることも
- 低リン血症・高リン血症:筋力低下、骨代謝への影響
- 高ナトリウム血症・低ナトリウム血症:頭痛、けいれん、意識障害の原因に
- 代謝性アシドーシス(乳酸や尿毒症による):呼吸数の増加、血圧低下
- 代謝性アルカローシス(補液や利尿薬による):筋けいれん、倦怠感など
長期的な合併症
急性腎障害の回復後にも影響を残すことがあるんだ。
- 慢性腎臓病(CKD)への移行:急性腎障害をきっかけに腎機能が戻らないことも…。
- 生命予後の悪化:とくに院内発症・敗血症性AKI・腎性AKIではリスクが高い
- 脳や心臓の血管系疾患のリスク上昇
- QOLの低下

治療中はもちろん、長い目でみて合併症が生じていないか観察していこう。
急性腎障害患者の看護

急性腎障害は、症状が目に見えにくいからこそ、小さなサインを見逃さないようにしていこう!
インアウト管理
急性腎障害は、尿量や体液の出入りを細かく見て、バランスが保てているかの確認が基本。時期によって対応も変わってくるから注意しよう。
- 尿量の変化をこまめに測定・記録(1時間ごとの記録が必要なことも)
- 点滴、経口摂取、注入など「IN」の量をすべて把握する
- 体重・浮腫・胸部ラ音・呼吸状態などから体液過剰や脱水を評価
- 多尿期に移行した際の脱水・電解質異常リスクに注意する
- CVPやBNP、胸部X線といった検査結果から、水分不足・過剰をアセスメントすることも大切
ルート管理と感染予防
急性腎障害は、透析用のブラッドアクセスカテーテルや複数のルートを使用する場面が多いんだ。これらのルートは長い期間留置することもあり、感染対策が欠かせないよ。
- ブラッドアクセスカテーテル(一時透析用)など太径ルートは感染リスクが高いため、清潔に扱う
- カテーテル挿入部(発赤・滲出液・腫脹など)の観察と清潔保持
- 末梢ルート、尿道カテーテル、動脈ラインなど、他の挿入部位の管理も大切
- 発熱・意識変容・WBC・CRPなど、全身状態の変化もチェック
- 手指消毒、手袋、マスクなど標準予防策を徹底する
栄養管理
急性腎障害の治療では、食事内容が制限されることも多いけど、必要な栄養はしっかり取れるようにサポートする必要があるよ。
- 医師や栄養士と連携して、たんぱく質・塩分・水分の制限内容を把握
- 食欲がない場合は、食べやすい食形態や味付けの工夫も検討する
- 食事の状況だけでなく、採血データや体重変化からも栄養評価を行う
- 退院後の生活を見据え、家族も巻き込んだ食事指導を行う
患者さんと家族の精神的サポート
病気が分かると、患者さんやご家族は「これからどうなるんだろう…」という不安を抱きやすいよね。特に、血液浄化療法を導入した場合には、これから先の見通しが立ちにくいから、理解の確認やサポートが必要だよ。
- 医師からの説明に同席し、疾患や治療について、理解できているかを確認する
- 急な治療の変化や透析導入に対し、患者さんや家族が思いを表出できるようにする
- 退院後の生活(通院・食事・日常動作など)を一緒に考える
- 不安な気持ちに対し、傾聴・寄り添う姿勢をもち、前向きに治療に取り組めるよう励ます

急性腎障害を振り返っていくよ!
「急性腎障害」 解説記事のまとめ
- 急性腎障害(AKI)とは、短期間のうちに腎臓の働きが急激に悪くなり、老廃物や水分・電解質のバランスが保てなくなる状態
- 初期は症状が目立たないため、尿量の減少やクレアチニンの上昇に注目する
- 原因は「腎前性・腎性・腎後性」に分けてアセスメントする
- 重症化した場合は、血液浄化療法が必要
- 水分出納の観察と、感染兆候など、小さな変化への気づきが重要

昨日の患者さんの変化、もっと早く気付けていたかもしれない…。だからこそ、今日からはもっとよく見ていこうと思います!
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