
抗菌薬


同じ感染症なのに、Aさんはセフェム系でBさんはカルバペネム系…。
どうして抗菌薬が違うんだろう?

いいところに気づいたね!抗菌薬は、感染している菌の種類や重症度、腎機能なんかで使い分けるんだ。同じ“抗菌薬”でも、どれを選ぶかで治療の方向が全然違ってくるんだよ。
抗菌薬の基本を整理していこう!
解説記事で学べること!
抗菌薬の分類と特徴

抗菌薬って抗生剤とは違うの?
まずは言葉の整理からしていこう!
- 抗微生物薬(antimicrobials):細菌・真菌・ウイルス・寄生虫など「微生物」に対して作用し、感染症の治療や予防に使われる薬の総称
- 抗菌薬(antibacterial agents):この中で「細菌」に効く薬のこと
- 抗生物質(antibiotics):本来は「微生物が作る化学物質」のことだけど、一般には「抗菌薬」とほぼ同じ意味で使われている(抗生剤=抗生物質の抗菌作用を利用した薬)

つまり、普段病棟で「抗生剤」って呼んでいる薬は、「抗菌薬」のことなんだ。
細菌とウイルスの違い
- 細菌は、自分の力で細胞分裂して増える生き物。細胞壁や自前のタンパク合成・DNA複製の仕組みを持っている
- ウイルスは、自力では増えられず、人や動物の細胞に入り込んでその仕組みを借りて増える存在。細胞壁や独自の増殖装置を持っていない
抗菌薬は細菌の「壁」「タンパク合成装置」「DNA複製」などを邪魔するから効くけれど、ウイルスには効果がないんだ。だから、ウイルス性の風邪には抗菌薬は不要とされているよ。
抗菌薬の作用機序
抗菌薬は、細菌の「生きるために必要な仕組み」をピンポイントで止める薬。大きく4つに分けられるよ。
- 細胞壁合成阻害:細胞壁を作れなくして細菌を死滅させる
- タンパク合成阻害:細菌のタンパク質を作らせない
- 核酸合成阻害:DNAやRNAを作らせない
- 代謝経路阻害:栄養利用や代謝を妨害する
4つの作用に分けて、代表的な抗菌薬もチェックしていこう。
主な抗菌薬と代表例
| 作用機序 | 薬のグループ | 代表的な薬 |
| 細胞壁合成阻害 | ペニシリン系 セフェム系 カルバペネム系 モノバクタム系 グリコペプチド系 | アンピシリン セフトリアキソン メロペネム アズトレオナム バンコマイシン |
| タンパク合成阻害 | マクロライド系 テトラサイクリン系 アミノグリコシド系 オキサゾリジノン系 | クラリスロマイシン ミノサイクリン ゲンタマイシン リネゾリド |
| 核酸合成阻害 | フルオロキノロン系 リファマイシン系 | レボフロキサシン・シプロフロキサシン リファンピシン |
| 代謝阻害 | 葉酸代謝拮抗薬 | スルファメトキサゾール・トリメトプリム(バクタ®) |
| その他 | クロラムフェニコール ホスホマイシン | クロラムフェニコール ホスホマイシン |
抗菌薬の基本的な使い方
- 経験的治療:まずは推定される菌に広く効く薬から開始することが多い
- 感受性結果が出たら調整:培養・感受性結果を見て、より狭い範囲の薬に切り替える(de-escalation)
- 適切な量・期間で使う:少なすぎても効かないし、長すぎても副作用や耐性菌を招く
- 耐性菌の問題:抗菌薬の乱用は耐性菌を生み、治療を難しくする
日本では、厚労労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」や感染症学会の提言があり、基本は 「必要なときに、必要な薬を、適切に使う」という原則に従って治療が進められているんだ。
投与前の観察・確認事項
投与前は、まず「確認」してから、安全に投与できるよう「準備」を行おう。抗菌薬の扱いは、投与前が重要だからね!

投与前確認
【アレルギー歴】
- 過去に発疹・呼吸困難・アナフィラキシーがなかったか
- ペニシリン系で反応があってもセフェム系が使える場合もある(側鎖による)
【腎機能・肝機能】
- Cr、eGFR、AST/ALTを確認
- 腎排泄型の薬(バンコマイシン、アミノグリコシドなど)は腎障害に注意
- 透析患者では透析の前後どちらで投与か、指示を確認する
【妊娠・授乳・年齢・併用薬】
- 妊娠中に禁忌の薬剤が選択されていないか(テトラサイクリンなど)
- 高齢者は腎機能低下に注意
- QT延長薬、抗てんかん薬、ワルファリンなどとの相互作用もチェック
投与前準備
【血液培養】
- 投与前に必ず採取する(2セット以上が推奨)
- 採取部位は左右など異なる部位から
- 消毒は十分乾燥させてから穿刺(コンタミ予防)
【ルート・投与方法】
- 中心静脈か末梢かを確認
- 高浸透圧薬(バンコマイシンなど)は末梢静脈炎に注意
- 投与速度を守る(例:バンコマイシンは10 mg/分以下)
- 配合禁忌の有無をチェック

投与前にもこんなにチェックすべきポイントがあるんですね…!

血培採取とアレルギー歴は忘れやすいから、
チャートに沿ってチェックする習慣を身に付けておこう!
投与中の観察と注意点

抗菌薬の投与時は、その時に出る反応を見逃さないようにしよう!特に、アレルギー反応や点滴中の異常は投与開始してすぐに出るケースもあるよ。
アレルギー反応・アナフィラキシー
- 投与直後〜数時間以内に出やすい
- 以前に発疹やかゆみが出た薬では、再投与で症状が強く出ることがあるため要注意
- 観察ポイント
- 皮膚:発疹、じんましん、かゆみ
- 呼吸:息苦しさ、喘鳴、咳
- 循環:血圧低下、頻脈、顔面蒼白
- アナフィラキシーの可能性があれば、すぐに投与を中止し、ナースコール・医師連絡・緊急対応へ
- 軽い発疹やかゆみのみでも、再投与時に重症化することがあるため、必ず記録・報告する
バンコマイシンを投与したら顔が赤くなった?
注意してほしい抗菌薬のひとつが「バンコマイシン」。
点滴中に顔や上半身が赤くなる・かゆみ・血圧低下が見られることがあるよ。これは「赤い人症候群(Red man syndrome/VIR)」と呼ばれる、投与速度が速すぎたときに起こる投与速度依存性の副作用なんだ。
原因はヒスタミンの急激な放出による一過性の反応で、アナフィラキシーとは別もの。
対応のポイント
- いったん投与を中止する
- 症状が落ち着いたら、速度を半分以下にして再開
- 予防には「10 mg/分以下(1 gなら100分以上)で投与」が基本
「アレルギー反応」と混同しやすいけど、速度調整で改善するのが特徴だよ。
静脈炎・漏出(ルートトラブル)
- 特に高浸透圧の薬(バンコマイシン、アミノグリコシドなど)は注意
- 観察ポイント
- 発赤、腫脹、疼痛、熱感
- ルートが硬くなっていないか、漏出していないか
- 末梢投与時は、希釈や投与速度を調整することで予防できる
- 異常を感じたら、すぐに投与を中止し、刺入部を観察・記録して報告する

特に、初めて投与する抗菌薬のときは注意しよう!
投与後の観察と評価

抗菌薬が効いているかどうかはどうやって評価したらいいですか?
効果判定
- バイタルサインの変化:発熱の改善、呼吸数・脈拍の安定
- 症状の変化:咳・痰、創部の発赤や膿の量など、感染部位の症状を比較
- 検査データの推移:
・WBC、CRP、プロカルシトニン(PCT)などの炎症マーカーの低下
・培養結果が陰性化、あるいは感受性結果で薬の効果が確認できる

効果の判定は、バイタルサイン・症状・検査から総合的にアセスメントしよう!
遅れて出る副作用
投与後すぐに出現する副作用だけでなく、遅れて出てくる副作用にも注意が必要だよ。
腎機能障害
- バンコマイシン、アミノグリコシド系などで注意
- 身体的症状:尿量の減少、むくみ、体重増加
- 定期的にCr、eGFRをチェックし、上昇していないか確認する
消化器症状(抗菌薬関連下痢)
- 広域抗菌薬の長期使用で腸内細菌叢が乱れることがある
- 軽い下痢〜重症のClostridioides difficile感染症(クロストリジウム)まで幅広い
- 発熱・腹痛・水様便が出た場合はすぐ報告し、指示を仰ぐ
血液毒性
- リネゾリドなどで骨髄抑制(貧血、白血球・血小板減少)
- 長期投与では定期的な血算確認が必要
耳毒性
- アミノグリコシド系で起こることがある
- 「耳鳴り」「聞こえづらい」「めまい」などの訴えに注意
- 内耳に直接障害を起こす副作用なので、検査データからの発見が困難。患者さんの自覚症状が一番のサイン。
経口薬への切り替え(IV→POスイッチ)
経口摂取が可能で、全身状態が安定していれば点滴から内服へ切り替えしていくよ。
切り替えのタイミング例
- 熱が下がり、食事が摂れている
- 消化管吸収に問題がない
- 同等の経口薬がある
経口薬へ切り替えができると、入院期間の短縮・静脈炎予防・業務負担の軽減につながるんだ。
記録と情報共有
- 投与後の症状・バイタル・副作用・検査値の変化を記録する
- 医師・薬剤師と情報を共有して、次回投与や退院後の内服指導につなげる

ルーチンで行う抗菌薬は作業化しやすく、記録が忘れがちに。副作用の早期発見のためにも記録を大切にしよう。
抗菌薬に関するQ&A

抗菌薬のよくある質問に答えていくよ!
Q1血液培養を取り忘れてしまった…どうしたらいい?
- 原則は抗菌薬投与前に採取する
- もし忘れた場合は、投与後であっても、できるだけ早く採取する
- 「抗菌薬が入っているから意味がない」と思わず、迅速に採ることが大切
血液培養を採っていないと気が付いたらすぐに採血しよう!菌が出る確率は下がってしまうけど、大切だよ。 抗菌薬投与前は血液培養するを徹底!
Q2.透析患者さんの抗生剤って、透析前?透析後?
- 基本的には透析後に投与。
- 透析で薬が除去されてしまうため、透析後に「補充投与」する考え方。
- ただし薬剤によっては、透析前の投与が可能な薬剤もあるため、使用方法に従う。
透析後が原則だけど、例外もあるから思い込みで投与しないように注意しよう!
Q3.バンコマイシンの採血タイミングはいつ?
- 以前はトラフ値(次回投与直前)を測っていたけど、最近はAUC(薬の濃度と時間の積分値)で管理するのが主流。
- 投与後1時間+次回直前など、採血タイミングは施設によって異なるためマニュアルを確認する。
- 腎機能変化がある場合は、採血時期を調整して再評価する。
各施設や医師の方針によっても採血時間が変わることがあるよ。分からなければ必ず確認!
Q4.アミノグリコシドの採血はどうするの?
- 1日1回法(拡張間隔投与)の場合は、1回の採血で濃度を確認する方式(ハートフォードノモグラムなど)を用いる。
- 従来法(1日2〜3回投与)では、ピーク(投与後30〜60分)とトラフ(次回直前)の2点採血。
- 方法は施設によって異なるため、プロトコルの確認が必須。
腎障害の起こりやすいバンコマイシンとアミノグリコシドは、採血で定期的に腎機能をチェックしていくよ。採血方法が混乱しやすいから、整理しておこう。
Q5.ペニシリンアレルギーの患者さんに、同じβラクタム系抗菌薬の、セフェム系抗菌薬って使っていいの?
- 原則、多くの場合は使用可能。
- アレルギー反応は「βラクタム環」ではなく側鎖構造によることが多いため、側鎖が異なるセフェム系・カルバペネム系では反応しないケースが多い。
- ただし、重度のアナフィラキシー歴がある場合は慎重投与または禁忌。
アレルギーのある患者さんには、出た症状だけでなく、どの薬かも確認しよう。もちろん医師への確認とチーム共有は忘れずに。

抗菌薬を振り返ってみるよ!
「抗菌薬」解説記事のまとめ
- 抗菌薬は細菌に作用する薬で、正しく選んで適切に使うことが耐性菌を防ぐカギになる。
- 投与前はアレルギー歴や腎機能などを確認し、血液培養の採取と投与ルートの準備を確実に行う。
- 投与中はアレルギー反応や静脈炎などの急性副作用に注意し、異常を感じたらすぐ対応する。
- 投与後は治療効果を評価しながら、腎障害や下痢など遅れて出る副作用を見逃さない。

抗菌薬って難しいと思ってたけど、使い分けや観察の根拠が分かると楽しくなってきました…!
これからは理由を考えて安全に投与していきたいです!


