下部消化管出血

急に患者さんが下血して…。
どうしたらいいのか頭が真っ白になってしまいました。

びっくりするよね。でも落ち着いて出血の様子とバイタルを確認すれば大丈夫。まずはショックのサインに気づけるようにしていこう!下部消化管出血を解説していくよ。

解説記事で学べること!

病態

下部消化管出血は、十二指腸の下の部分から肛門までの消化管で起こる出血のこと!

主な原因

最も多い原因は大腸憩室出血(けいしつしゅっけつ)。憩室とは、大腸の壁の一部が袋状に外へ飛び出してできた部分のことを指すんだ。その袋に通っている血管が破れることで出血するんだよ。

出血は突然始まることが多く、一時的に止まっても再発することがある。自然止血するケースが多いけれど、大量出血やショックを起こすこともあるため注意が必要だよ。

その他の原因疾患

大腸憩室以外にも、下部消化管出血の原因となる疾患は以下のものがあるよ。

  • 虚血性腸炎:血流が一時的に低下し、腸の粘膜が障害される。左側結腸に多く、腹痛と血便を伴う。
  • 感染性腸炎:細菌やウイルス感染によって炎症が生じ、粘膜が出血する。発熱や下痢を伴う。
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病):慢性的な腸の炎症で粘膜がただれ、血便が続く。若年者に多い。
  • 大腸ポリープ・大腸がん:腫瘍から出血する。少量の出血が持続することが多い。
  • 血管異形成(血管拡張):加齢などで脆くなった血管からの出血。再発することがある。
  • 痔疾患・直腸潰瘍:肛門や直腸に近い部位からの出血。比較的軽度の出血が多い。

小腸からの出血

大腸に明らかな出血源が認められない場合、小腸からの出血も考慮する必要があるよ。頻度としては少ないけれど、血管異形成、Meckel憩室、小腸腫瘍などが原因で小腸から出血することもあるんだ。

小腸は内視鏡での観察が難しいから、出血部位の特定に時間がかかることが多いんだよ。

出血の分類

下部消化管出血は、出血の経過や性状によって以下のように分類されるよ。

  • 活動性出血:現在進行中の出血で、大量出血やショックに至ることがある
  • 断続的出血:止まったり再開したりを繰り返す。慢性的な貧血の原因となることがある。
  • 慢性出血:少量の出血が持続し、貧血の進行で発見されることが多い。

憩室が原因になることが多いんですね。
でも、ほかの疾患もたくさん関係しているんだ…。

出血の場所や原因によって症状も違うんだ。
次は症状について解説していこう!

上部消化管出血についてはこちらで解説してるよ👈

症状

下部消化管出血の代表的な症状は下血!

下血(血便)の性状

下血の性状は、出血部位の位置や出血量、腸の中でどれくらい滞留したかによって、色や形が大きく変わるよ。

  • 鮮血便真っ赤な血が混ざる。直腸やS状結腸など肛門に近い部位からの出血や、大量出血時にみられる。
  • 暗赤色便やや黒みを帯びた赤色。出血部位がやや上部の結腸(上行結腸や横行結腸)などのことが多い。
  • 黒色便(タール便):通常は上部消化管出血の特徴だが、下部出血でも腸内に長く滞留すると黒くなることがある。

観察するときには、便の性状も合わせて記録しておく必要があるよ。便の形状・硬さ・水分量などを分類した「ブリストル便形状スケール」がよく使われるよ。

下血以外の症状

出血量や経過、原因疾患によって、下血以外にもさまざまな症状があるんだ。

  • 貧血症状:動悸、息切れ、めまい、倦怠感、顔色不良など。慢性的な少量出血で生じやすい。
  • 循環器症状:頻脈、血圧低下、冷汗、意識障害など。大量出血により循環血液量が急激に減少すると、ショック状態に陥ることがある。
  • 腹痛:特に虚血性腸炎でみられる。左側腹部の急な痛みを伴うことが多い。
  • 発熱:感染性腸炎や炎症性腸疾患でみられることがある。
  • 悪心・嘔吐:腸管の膨満や腹痛に伴って出現することがある。

疾患別の症状の特徴

原因疾患によっても、症状の出かたには傾向があるんだ。特徴的な症状をまとめていくよ。

原因疾患出血量・便の性状随伴症状・特徴
大腸憩室出血鮮血便(中〜多量)腹痛なしで突然発症することが多い
虚血性腸炎鮮血便(少〜中等量)左下腹部痛を伴う。
発症は比較的急激
炎症性腸疾患少量の血便下痢や発熱を伴い、若年者に多い
大腸ポリープ・がん少量の血便持続性で、慢性的な貧血を伴うことがある
感染性腸炎血性下痢便発熱、腹痛、脱水を伴うことがある

下血の色や量である程度どういった疾患かが判別できるんですね…!

鮮血か暗赤色か、腹痛があるかないかといった情報がすごく大切だよ。自分が発見したときは、正確に色や量を記載しよう。

検査

血液検査

血液検査は、出血量や全身の影響、合併症の有無を把握するために欠かせない検査だよ。

  • 赤血球数・ヘモグロビン(Hb)・ヘマトクリット(Ht)
    :出血の程度や貧血の有無を評価する。急性出血直後は変化が乏しいこともあり、経時的な測定が重要。
  • 白血球数・CRP
    :感染性腸炎や炎症性腸疾患など、炎症性変化の有無を確認する。
  • 血小板数
    :出血傾向を助長する異常がないか確認する。
  • 凝固系検査(PT-INR・APTT)
    :抗凝固療法中や肝障害を持つ患者では出血リスクが高まるため、止血能力の指標として確認する。
  • 肝機能・腎機能検査(AST・ALT・BUN・Crなど)
    :基礎疾患の有無や、造影検査・治療に伴う影響を把握するために実施する。
  • 電解質(Na・K・Cl)
    :出血や下痢による電解質異常の有無を確認する。
  • 血液型・クロスマッチ試験
    :輸血が必要となる場合に備えて、早期に判定しておく。

特にHbの推移と凝固系の値は、治療のタイミングを決める判断材料になるから、こまめにチェックするよ。

画像検査

画像検査は、出血部位や原因を明らかにするために行われるよ。

  • 造影CT検査
    出血点や原因疾患を特定するうえで最も有用な検査。
    出血部位では、血管から造影剤が腸の中に漏れ出す像エクストラバセーション:extravasation)が見えることがあり、これは現時点で出血している(活動性出血)と判断できるんだ。

そのほか、大腸憩室や腫瘍、虚血性腸炎などの原因疾患や合併症(穿孔など)も同時に評価できるよ。

  • 腹部超音波検査(US)
    腸管の浮腫や壁肥厚、腹水、肝疾患の有無などを確認する
    CTができない場合や、スクリーニングとして実施される
  • 腹部X線検査
    消化管穿孔や腸閉塞の有無を確認する

内視鏡検査

下部消化管出血の診断と治療の中心となる検査で、バイタルが安定したら、できるだけ早期に実施するよ。

大腸内視鏡検査で出血源を特定し、同時に止血処置を行うことができるんだ。現在出血している、または最近出血した跡のことをSRH(出血の跡)というよ。このSRHがみられる場合には、内視鏡的止血術の適応となるんだ。SRHには、活動性出血・露出血管・付着凝血塊などが含まれ、いずれも再出血のリスクが高い所見なんだよ。

その他の検査

  • カプセル内視鏡・小腸内視鏡
    大腸内視鏡で出血源が特定できない場合に、小腸出血を疑い検査する。
  • シンチグラフィー
    少量の出血が継続する場合に、出血の部位を特定する。
  • 便潜血検査
    慢性的な少量出血のスクリーニングとして実施される。

治療

下部消化管出血は、まずは全身状態の安定化を図ろう。循環動態が安定したら、止血処置へ進むんだ。

初期治療

出血時にはまず、循環動態を安定させる初期治療が優先されるよ。大量に出血した場合には、血圧低下やショックを起こすことがあるため、迅速な対応が求められるんだ。

  • 輸液・輸血:循環血液量を補うために実施。ヘモグロビン値が7g/dL未満で輸血を検討する。また、心疾患がある場合は、Hbを10g/dL程度に維持することが推奨されているため早めに検討する。
  • 止血剤の投与:出血傾向(凝固系検査(PT-INR・APTT)や血小板数の異常)がある場合に検討される。もともと抗凝固薬や抗血小板薬の服用をしている場合は、必要に応じて中止や拮抗薬の投与を検討する
  • 絶食・安静:腸管を安静にし、出血部位への刺激を避ける。
  • 基礎疾患の治療:感染や炎症など、出血の原因疾患がある場合は並行して対応する。

内視鏡的止血術

大腸内視鏡を使って、出血している部分を直接止血する方法だよ。下部消化管出血の治療では、まずこの方法が検討されるんだ。

内視鏡で出血点にSRH(出血の跡)がみられる場合は、再出血リスクも考慮し、適応となるよ。

主な方法は以下のとおり

  • クリップ止血法:出血部位の血管を金属クリップで挟んで閉じる。
  • バンド結紮法:結紮器具で縛る方法で、憩室出血などでよく実施される。再出血を抑える効果が高い。
  • APC(アルゴンプラズマ凝固法):血管異形成など、広範囲から出血している場合に有効。

憩室出血では、バンド結紮法のほうが再出血しにくいという報告もあるんだ。出血部位や腸の形などを考慮し、患者さんに最適な治療方法が選択されるよ。

血管塞栓術(IVR)

内視鏡で止血できない場合に行われるのが、血栓塞栓術(IVR)だよ。カテーテルを使って出血している血管を探し、塞ぐことで止血する方法なんだ。

内視鏡での止血が難しいときや、出血が多くて視野が確保できないときが適応だよ。

この方法は、外科手術と比べて体への負担が少なく、安全性が高いんだ。ただし、再出血のリスクは外科手術よりやや高いといわれているよ。

外科的治療

外科手術は、出血部位を含む腸管を切除する治療方法だよ。

適応となるのは以下の状態のときだよ。

  • 内視鏡やIVRでも止血ができない
  • 再出血を繰り返す
  • 腸管の壊死や穿孔を伴う
  • 大量出血で全身状態が維持できない

一般的には、手術になるケースは多くないけど、救命のために必要なケースもあるんだ。出血の経過によって、治療が選択されるから、毎日の症状の観察が重要なんだよ。

止血するための治療にも、実施するべき段階やタイミングがあるんですね。

そうなんだ。内視鏡 → IVR → 手術っていう流れを覚えておくといいよ。どの治療になる場合でも、患者さんの状態が安定しているかがとても重要なんだ。

合併症

最も多い合併症が再出血だよ!出血の状況によってはここから重篤な合併症を併発することもあるんだ。

再出血

下部消化管出血で最も多い合併症が再出血だよ。いったん止血しても、数日から数週間後に再び出血することがあるんだ。

特に、大腸憩室出血では、再出血を繰り返しやすいよ。また、高齢者や抗血栓薬を内服している患者では、再出血のリスクが高くなるから注意しよう。

退院後も再出血の可能性があるから、外来での経過観察も大切だよ。退院時には、便の色や量の変化を観察するよう指導をしよう。

出血性ショック

大量出血により循環血液量が急激に減少すると、出血性ショックを起こすことがあるんだ。これは命に関わる緊急事態だよ。

血圧低下、頻脈、冷汗、顔面蒼白、意識障害などのショック兆候があれば、輸液や輸血といった緊急対応が必要。処置が遅れた場合、臓器への血流が不足し、腎不全や意識障害を引き起こしてしまうんだ。

ショック兆候は絶対に見逃したらダメなやつですね…!

腸管穿孔・腹膜炎

腸壁が弱くなった部分に圧がかかると穿孔(穴があく)し、腸の内容物が腹腔内に漏れ出した結果、腹膜炎を起こすことがあるんだ。虚血性腸炎の重症化や、内視鏡治療のあとにおこることがあるよ。部位としては、左側結腸は穿孔リスクが高い場所だよ。

症状は、強い腹痛・発熱・腹部膨満などが現れるんだ。特に、痛みが強くなったり、張ってきたりした場合は急変リスクが高くなるよ。早く発見できれば、適切な対処ができるから、小さなサインを見逃さないようにしよう。

感染症

腸管内に貯まった血液は、細菌が増えやすい環境になるんだ。また、穿孔やドレーン管理の影響で感染を合併することもあるよ。

  • 発熱や白血球上昇、CRP上昇を認めた場合は感染を疑う。
  • 創部やドレーン部の発赤・腫脹にも注意。
  • 状況に応じて抗菌薬の投与が行われる。

腸内で増殖した最近が血液に入ると、菌血症や敗血症に発展することがあるんだ。敗血症は多臓器不全に陥る命に関わる状態だよ。特に高齢の人や体力が落ちている人では重症化しやすいから、発熱や排液の性状など感染兆候を早期に発見できるようにしよう!

敗血症の詳しい解説はこちら👈

内視鏡・IVRに伴う合併症

処置に伴う合併症にも注意が必要だよ。

  • 内視鏡的止血術:穿孔や憩室炎がまれに起こる。
    特に長期ステロイド内服や透析中の患者では、創傷治癒の遅延によりリスクが高いから注意しよう。
  • 血管塞栓術(IVR)
    塞栓物質による血流障害で、一時的に腸管虚血を起こすことがある。
    発熱や腹痛の出現に注意が必要。

看護

合併症の早期発見

下部消化管出血では、出血の再発やショックなどの合併症を早く見つけることが大切だよ。出血量や全身の変化をこまめに観察しよう。

  • 血圧・脈拍・呼吸・体温を頻回に測定し、血圧低下や頻脈などショックのサインに注意する。
  • 反応が鈍くなる、会話が遅れるといった意識レベルの低下を見逃さない。
  • 顔色や唇、爪床の色や乾燥を観察し、貧血や循環不全の兆候を確認する。
  • 便の量・色・性状・回数を記録し、便器内の色やおむつの汚れ方から出血量の変化を把握する。
  • 「顔色が白い」「便の色が濃くなった」など、患者さんの訴えや小さな気づきから、再出血の可能性をアセスメントする。

輸液・輸血管理

出血で減った血液量を補い、循環を維持するためには、点滴や輸血による治療が必須だよ。安全な投与と、反応の観察を徹底しよう。

  • 点滴ルートの閉塞や漏れ、滴下速度が指示通りに実施できているかどうかをチェックする。
  • 輸血中は、発熱、悪寒、発疹など副作用の有無を観察し、異常時はすぐ報告する。
  • 輸血の際は各施設のマニュアルを遵守し、注意深く観察・記録を行う。
  • ヘモグロビン・ヘマトクリット・PT-INRなどを確認し、出血の進行や止血傾向を評価する。

▸輸液についての詳しい解説はこちら👈
▸輸血についての詳しい解説はこちら👈

検査・治療の介助

下部消化管出血では、出血源の特定と止血のためにさまざまな検査や処置が行われるよ。安全にスムーズに実施できるように、事前準備と観察をしっかり行おう。

  • 大腸内視鏡や造影CT、IVR(血管塞栓術)など、それぞれの目的と流れを理解し準備しておく。
  • 物品やルート、体位などを事前に整えて、検査開始時に慌てないようにする。
  • 検査や処置前後の血圧・脈拍・SpO₂を確認し、変化がないかを記録する。とくに造影検査や鎮静薬使用時は、呼吸状態にも注意する。
  • 処置中の、顔色・発汗・訴えなど、苦痛のサインを観察し、早めに異常を察知する。
  • 検査後は、安静に過ごせるよう環境を整え、出血量の増加や腹痛・発熱がないかを観察する。

本人・家族の精神的サポート

突然の下血や出血の多さを目の当たりにすると、患者も家族も不安になるものだよ。看護師はその気持ちに寄り添い、安心できる環境作りをしよう。

  • 「びっくりしましたよね」「怖いですよね」と共感の言葉を伝え、患者さんに寄り添った声かけを行う。
  • 検査や治療の目的、流れを簡潔に伝えて、見通しを持てるようにする。
  • 「これから内視鏡で出血している場所を確認しますね」など、患者さんに合わせた理解しやすい言葉を選ぶ。
  • 下血や検査で露出が多くなる場面では、カーテンを閉めたり、声かけをしてから動作に入ったりし、羞恥心へも配慮する。
  • 検査や治療で患者さんと家族が離れる時間が長くなるときは、経過を簡単に伝え、不安を和らげる。
  • 不安が強いと血圧や脈拍が上がることもあるため、穏やかな声かけや呼吸を整えるよう促す。

急な出血って本当にびっくりするし、怖いですよね。
今何をしているのか、どんな経過なのかって声かけなら私にもできそうです!

下部消化管出血を振り返ってみるよ!

「下部消化管出血」解説記事のまとめ
  • 出血やショックのサインを早期に発見できるよう、バイタル・意識・下血の性状など全身の変化を細かく観察する。
  • 輸液・輸血は、ルートや流量、副作用、検査値を確認しながら安全に管理する。
  • 検査や治療では、事前準備と前後の観察を徹底し、異常の早期発見に務める。
  • 患者と家族が検査や治療に安心して臨めるよう、わかりやすい説明と寄り添った対応を行う。
  • 看護師は、変化の早期発見と心理的サポートの両面から患者の回復を支える。

まずは落ち着いて観察していきたいです。患者さんが安心できるように声かけも大事にします。

解説記事で学べること!