
播種性血管内凝固症候群(DIC)


DICってよく診断名にあるんですけど、いろいろな疾患と一緒に書かれているから、何が起きてるのかよく分からなくて…。

DICは他の疾患と併発するから、症状や検査がバラバラに見えやすいよね。DICになると、体の中で何が起きているか、どんな治療やケアが必要なのかを整理していこう!
解説記事で学べること!
DICの病態

播種性血管内凝固症候群(DIC)は、単独で起こる病気ではなく、重い基礎疾患に続いて発症する病態!
血液を固める仕組みが全身で異常に活性化してしまい、あちこちの血管内で血栓が作られてしまう。一方で、出血もしやすくなるという、とても不安定な状態のことだよ。
本来、血液が固まる反応は、出血を止めるために必要な大切な仕組み。でもDICでは、その仕組みが全身で、必要以上に起こってしまうんだ。
DICの発症のきっかけ
DICの発症には、体への強いダメージや炎症が関係しているんだ。
たとえば、以下のような状態だよ。
- 悪性腫瘍(白血病など)で腫瘍細胞が壊れたとき
- 大きな外傷や手術
- 敗血症などの重い感染症
こうした状況では、組織因子(TF)という、「血を固め始める合図」のような物質が、血液の中にたくさん出てきてしまうんだ。
特に感染症では、炎症反応が強く起こり、炎症性サイトカインがたくさん放出される。その影響で血管の内側(血管内皮)が傷つき、本来は必要なときだけ働くはずの血液を固める反応が、さらに起こりやすくなるんだ。

「炎症が起きる → 血が固まりやすくなる → さらに体に負担がかかる」という、悪循環に陥ってしまうんだ。
これが全身性の凝固活性化と、消費性凝固障害につながっていくんだよ。
凝固系の過剰活性化
血を固める反応が止まらなくなると、血を固める働きを強める物質(トロンビン)が、必要以上につくられてしまうんだ。
その結果、全身の細い血管の中で目に見えない小さな血栓(微小血栓)があちこちに多発してしまうよ。
これらの血栓は血流を邪魔するため、
- 脳
- 腎臓
- 肺
- 肝臓
など、さまざまな臓器に十分な酸素や栄養が届かなくなり、臓器障害を引き起こす原因になるんだ。
消費性凝固障害
血栓が作られ続ける過程で、止血に必要なものがどんどん使われていくよ。
具体的には、
- 血小板
- 凝固因子
これらが大量に消費されてしまう。
すると、体の中では「血は固まりすぎているのに、いざ出血すると止められない」という矛盾した状態になるんだ。
これを消費性凝固障害と呼ぶよ。
線溶の亢進とDICの病型
体は、できすぎた血栓を何とかしようとして、血栓を溶かす反応(線溶)も強めるんだ。
その結果、以下の状態に陥ってしまうよ。
- フィブリン分解産物(FDP)が増加
- 出血傾向がさらに強くなる
DICは、基礎疾患によって凝固と線溶のバランスが異なり、次のように分類されるんだ。
- 線溶抑制型
- 敗血症など
- 血栓ができやすく、臓器障害が目立つ
- 線溶亢進型
- 急性前骨髄球性白血病(APL)など
- 出血症状が強く出やすい
- 線溶均衡型
- 固形がんなど
- 凝固と線溶のバランスが比較的保たれている

つまりDICでは、原因となる病気によって体の中で起こっているバランスが違うんだ。次は、実際にどんな症状として現れるのかを見ていこう。
DICの症状
DICの症状を考えるときは、症状だけを見るのではなく、患者さんの背景とセットで考えることが大切なんだ。
症状は、大きく2つに分けられるよ。
- 血が止まらない症状(出血症状)
- 血が詰まることで起こる症状(臓器障害)
どちらか一方だけが目立つこともあれば、同時にみられることもあるんだ。
出血症状
DICで比較的早く気づきやすいのが、「出血しやすくなる」変化なんだ。
具体的には、以下の症状がみられるよ。
- 皮膚にあおあざ(紫斑)ができやすくなる
- 点状出血が増える
- 鼻血や歯肉出血が止まりにくい
- 採血や注射のあとに、出血がなかなか止まらない
「いつもより出血が多い」「止まるまでに時間がかかる」そんな小さな違和感が、DICを疑うきっかけになることも多いんだ。
進行するとみられる重篤な出血
DICが進行すると、命に関わる出血が起こることもあるよ。
たとえば、以下のような出血。
- 血尿
- 吐血、下血
- 脳出血による意識障害
- 肺出血による呼吸状態の悪化
出血量がそれほど多く見えなくても、全身状態が急に悪化することがあるのがDICの怖いところなんだ。
臓器障害
DICでは、出血だけでなく、血栓による臓器障害にも注意が必要だよ。全身の細い血管にできた血栓が血流を妨げることで、さまざまな臓器に症状が現れるんだ。
| 障害される部位 | 主な症状 |
| 中枢神経 | めまい/意識障害/昏睡 |
| 腎臓・肝臓 | 尿量の減少(乏尿)/むくみ(浮腫)/黄疸 |
| 呼吸器・循環器 | 息切れ/呼吸困難/頻脈/ショック状態 |
| 末梢循環 | 四肢の冷感/チアノーゼ/皮膚の壊死 |

これらの症状は、全身の細い血管が血栓で詰まり、血流が悪くなっているサインなんだ。
TIPS:DIC症状のチェックポイント
DICの症状を見るときは、以下のポイントを確認しよう。
・原疾患がある
・出血症状と臓器症状が組み合わさっている
・時間とともに症状が増えてきている
出血だけじゃなくて、意識や呼吸、尿量など全体の流れを見るようにしよう!
DICの検査
DICは、出血・血栓形成・炎症といった異常が重なって起こるから、複数の検査結果を組み合わせて点数化するスコアリング法が用いられるよ。
DICの診断基準
JAAM(急性期DIC)基準
JAAM基準は、救急・集中治療領域の急性期患者を想定した診断基準だよ。評価項目が少なくシンプルで、早い段階でDICを捉えることを重視しているのが特徴。合計3点以上でDICと診断されるんだ。

敗血症や重症感染症など、できるだけ早く診断を付けたいという場面でよく用いられるよ。

“血小板が減って、FDPが上がって、PTが延びてきたら要注意”
と覚えよう。
JSTH(日本血栓止血学会)基準
JSTH基準は、より詳しく病態を評価することを目的とした診断基準だよ。この基準の特徴は、基礎疾患のタイプごとに評価方法が異なることと、凝固と線溶のバランスを、より丁寧に見ること。
たとえば、
- 感染症に伴うDIC
- 造血器腫瘍に伴うDIC
- 固形がんに伴うDIC
など、原因となる疾患ごとの特徴を考慮してスコアリングされるんだ。
その分、少し複雑だけど、「今、体の中で何が起きているのか」をより正確に把握しやすい基準でもあるよ。
血液検査(凝固・線溶系の検査)
DICが疑われた場合、血液検査では凝固系と線溶系の異常をまとめて確認するよ。
【血小板数】
DICでは著明に減少する。
全身で血栓が作られる過程で、血小板が消費されていることを反映する。
【FDP・Dダイマー】
上昇する。
血栓が形成され、それが溶かされたあとの“残りかす”を示す指標。
【プロトロンビン時間(PT-INR)】
延長する。
凝固因子が消費され、不足している状態を反映する。
【フィブリノゲン】
低下する。
血を固めるために必要な成分が、消費・分解されていることを示す。
※ただし、敗血症などの初期では、炎症反応により一時的に高値を示すこともある。
(基本的には消費が進めば低下していくため、数値だけでなく、急激な低下傾向がないかを確認する)
【アンチトロンビン(ATⅢ)活性】
低下する。
凝固を抑えるブレーキ役の因子が、過剰な凝固を止めるために使い果たされている状態。

血液検査の中でも凝固系のいろいろな項目をチェックするんだね!
DICの治療
DICは単独で起こる病気ではないから、まずは原因となっている基礎疾患をコントロールすることが大切だよ。
原疾患に対する治療
原因となっている疾患に応じて、治療内容は大きく異なるよ。
- 敗血症
抗菌薬投与や、感染巣のドレナージを行う - 白血病・悪性腫瘍
化学療法など、腫瘍に対する治療を進める - 産科疾患
胎盤早期剥離などでは、分娩の終了や原因除去 - 外傷・手術後
出血源や損傷部位のコントロール
これらの治療が進むことで、DICそのものも改善に向かっていくんだ。
敗血症についてはこちら👈
抗凝固療法
DICでは、血管内で血栓が作られすぎないように、抗凝固療法が行われることがあるよ。
代表的な薬剤は次のとおり。
- 遺伝子組み換えトロンボモジュリン(rTM)
凝固を抑えるプロテインCを活性化
抗炎症作用もあり、出血リスクが比較的低い
現在、DIC治療でよく用いられる薬剤 - アンチトロンビン(AT)製剤
AT活性が70%以下に低下している場合に投与
凝固カスケードを強力に抑制する - ヘパリン類
炎症が軽度で、明らかな出血がない場合に使用
出血を助長する可能性があるため、慎重に使用 - 蛋白分解酵素阻害剤(ナファモスタット、ガベキサートなど)
線溶亢進型DICや、重篤な出血を伴う場合に用いられることがある
薬剤の選択は、出血の有無・DICの病型、原疾患を踏まえて判断されるんだ。
凝固因子・血小板補充療法
出血がみられる場合や、侵襲的な処置を行う前には、止血に必要な成分を補う治療(補充療法)が行われることがあるんだ。
- 新鮮凍結血漿(FFP)
凝固因子を補充する
フィブリノゲン150mg/dL以上、PT-INR 1.5以下を目安とする - 濃厚血小板(PC)
血小板数を補う目的で使用される。
血小板数を5万/μL以上に維持することを目標とする。
ただし、補充療法だけではDICは改善しないよ。必ず原疾患の治療と並行して行うことが大切だからね。
輸血療法についてはこちら👈
DICの看護
DICの状態の患者さんの看護では、症状の悪化をいち早く察知することと、出血や臓器障害といった二次的合併症を防ぐことがとても大切なんだ。急に状態が変わることがあるから、いつも以上に丁寧な観察を意識しよう!
挿入物・穿刺部の管理
DICでは、ほんの小さな穿刺や刺激でも、出血が止まりにくくなることがあるから注意しよう。
- 採血部位や点滴刺入部からの出血、にじみの有無を確認する
- ガーゼに血液が染み続けていないかを観察する
- 術後ドレーンや尿道カテーテル挿入部からの出血確認をする
- 血尿などがないか、尿の性状を観察する
- 採血後は通常よりも長時間、確実な圧迫止血を行う
- 止血しているかをしっかり確認する
- 出血が続く場合は早めに医師へ報告する
皮膚の観察と薬剤投与時の注意
皮膚は、DICの進行や合併症を早く教えてくれる大事なサインなんだ。丁寧に観察しよう。
- 紫斑や点状出血の有無を確認する
- 皮下出血の範囲が広がっていないか
- 皮下出血している場合は、必要に応じてマーキングを行い広がりの状況を観察する
- 新たな出血斑が出現していないか観察する
- 体動によるルート抜去や牽引がないか注意し、安全なルート管理を行う
- 不要な穿刺や侵襲的処置は避け、「出血を起こさせない関わり」を意識する
薬剤投与時の注意
- ガベキサートなどの薬剤は血管刺激性が強いため、投与時は穿刺部や血管の状態を観察する
- 可能であれば太い静脈、または中心静脈から投与する
- 刺入部の発赤、腫脹、熱感、疼痛をこまめに確認する
- 点滴漏れによる静脈炎や皮膚障害を予防する
脳卒中・脳出血リスクへの対応
DICの状態では、特に脳出血は重篤になりやすいから注意深く観察しよう。
- JCS/GCSを用い、意識レベルの変化をこまめに確認する
- 瞳孔の大きさや左右差の有無を観察・記録する
- 手足の麻痺、動かしにくさ、しびれを観察する
- 急な頭痛、嘔吐、落ち着きのなさを観察する
- 患者さんの訴えや受け答えの変化を観察する
- 急激な血圧上昇(クッシング現象などの頭蓋内圧亢進サイン)も合わせて観察
多臓器不全を意識した観察
DICでは、血栓によって複数の臓器が同時に障害されることがあるんだ。わずかなサインを見逃さず、早めに対処できるよう観察しよう。
- 尿量の減少や尿性状の変化を観察する
- 呼吸数の増加、息苦しさ、SpO₂低下など呼吸状態の変化を観察する
- 血圧低下、頻脈、末梢冷感など循環動態のわずかな変化に注意する
- 黄疸の出現や肝機能データの変化を確認し、患者さんの症状を観察する
- 「なんとなく元気がない」といった全身状態の変化をそのままにせず、わずかな変化に目を向ける

出血も血栓も、いつどこで起きてもおかしくない状態だよ。
急変前に気が付けるよう観察ポイントをしっかりおさえておこう!

播種性血管内凝固症候群(DIC)を振り返ってみるよ!
「播種性血管内凝固症候群(DIC)」解説記事のまとめ
- DICは単独の病気ではなく、重い基礎疾患に続発する病態で、全身で凝固が過剰に起こり「血栓ができる」と「出血しやすい」が同時に起こる。
- 発症の引き金は強い炎症や組織障害(敗血症、外傷・手術、悪性腫瘍など)で、炎症→凝固促進→さらに負担が増えるという悪循環に陥る。
- 凝固系の過剰活性化で微小血栓が多発し、脳・腎・肺・肝などの血流障害から臓器障害を招く。
- DICの治療では、原因となっている原疾患のコントロールが最も重要で、必要に応じて抗凝固療法や凝固因子・血小板補充が行われる。
- 看護では、出血の有無だけでなく、意識・呼吸・尿量など全身状態の変化から、急変のサインをいち早く察知することが大切。

DICって病名というより、体の中で起きている異常な状態ということがわかりました。
だからこそ、看護師として全身の細かな観察が重要なんですね!


